プルサティラ (ページ50)

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  宮近「帰ったら場所戻しなね」  

 『戻したくないから帰らないって言ったら？』   

宮近「それでも帰すよ」  
  

いつまでも困らせてくる。

俺、諦めきれてないんだからさ

そんなこと言われたら帰したくなくなるよ。

『私、海斗と結婚したかったな』 

『結婚式来たら、花嫁奪ってもいいんだよ』

『大好きだよ、ずっとずっと』

それなら今からすぐ結婚しようよ。

奪って、駆け落ちして、そのままずっとアイツがいないところで一緒に暮らそうよ。

俺だってずっと好きなんだよ。

そんなに好きなら俺を選んでよ。

『もし海斗が結婚したら、私寂しくて死んじゃうかも』

なら、Aが結婚する時俺が寂しくて死んじゃうよ。

だって俺、今後Aより好きな人出来る自信ないから。

こんなことすることじゃないって分かってるけど、誰かのものになる前に、Aにもう一度触れたかった。

控えめに一瞬触れたキスは呆気なくて、物足りなくて、余計自分の心を苦しめた。

宮近「あからさまに寂しいって顔すんなよ」

『だって…』

宮近「別に一生会えないわけじゃないし」

『そう、だよね』

自分に言い聞かせるような言葉。

Aが結婚しても、一生の別れって訳じゃないから。

宮近「何かあったらいつでも助けに行くし、もしあの束縛彼氏がAのこと手に負えなくなって捨てられたら俺がもらってあげる」

『なにそれ、捨てられないし』

宮近「はいはい」

『それに、海斗のことはもう頼らないよ』

宮近「そ」

『海斗なしでもちゃんと生きていけるもん』

宮近「その分アイツに支えてもらいなね」

『わかってるよ』

宮近「あー…」

『なに？』

"俺、自分が思ってたよりAのこと好きだったみたい"なんて、今更すぎて言えるわけねぇじゃん。

宮近「いや、なんでもない」

『海斗、行こっか』

宮近「だな」

助手席で静かに涙を流すAのことを支えるのはもう俺じゃない。

その涙は、俺のため？

もうそんな理由も聞けないけど。

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『海斗、来てくれてありがとう』

結婚式の日、母親と元太に引っ張られて参加した。

ウェディングドレス姿のAは

風に靡く髪、ドレス、花びら。

全てがものすごく綺麗で

奪えないのに、また心を奪われた。

宮近「結婚、おめでとう」

誰にも告げられない恋をした。

-fin-