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宮近「あの人は、会社の先輩だから」
『え?』
宮近「スーパーで見かけたんでしょ?それ、先輩が彼氏にフラれたからヤケ酒付き合えって俺と俺の同期呼んで3人で飲んでただけ」
『でもなんかいい雰囲気だった』
宮近「いい雰囲気だったかは知らないけど、俺の同期が先輩のこと好きだから、キューピットになってあげてただけ」
『ふーん…』
もう関係ないはずなのに、勘違いだとわかると安心する。
こんな気持ちを抱くのは最後にしなきゃいけない。
宮近「…指輪、捨てたら怒る?」
『当たり前でしょ』
宮近「ん、じゃあ返す」
ポケットから取り出して、差し出してくる。
『海斗、お願いがあるんだけど』
宮近「なに?」
『その指輪』
宮近「はい」
『…そのまま私の左手の薬指に、つけてほしい』
宮近「は?」
目を丸くしている。
海斗と結婚しないなら、せめてあの日の約束を形だけでも果たしたくて。
『お願い』
宮近「無理。なんで人の婚約指輪そんなことにつけなきゃいけないの」
『ねぇ海斗』
宮近「しないよ、俺が耐えらんないから」
耐えられないなんて、そんな言葉緊張しちゃうからやめてよ。
『…海斗、私ね?こうして海斗とふたりでゆっくり会えるの、多分これが最後』
宮近「…」
『最後のお願い、聞いてよ』
深いため息をついたかと思うと、指輪を持ち直して私の左手をとる。
子どもの頃散々遊んだ公園のベンチ。
薄暗い街灯と優しく照らす月明かり。
目の前にいる、ずっと大好きな人。
自分でお願いしたくせにドキドキして、息ができない。
そんな私の顔を見てフッと鼻で笑ってきた海斗は、そのまま少し震えた手で私の薬指に指輪を通した。
『ありがとう』
宮近「帰ったら場所戻しなね」
『戻したくないから帰らないって言ったら?』
宮近「それでも帰すよ」
…ここで引き止めないのが海斗らしいし、この返事を想定していた。
だって、引き止められても私がどんな反応したらいいか分からないから。
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作者名:愛生 | 作成日時:2022年2月6日 23時