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『私帰るから』
宮近「ん」
元生徒会長の話を聞き流しながら、手元にあったグラスに入ったお酒を飲み干して
菜奈には先に帰るとLINEをして、混まないうちに会場から出てクロークに向かう。
なのに、何故か付いてくるこの人。
宮近「二次会行く?」
『行かない』
宮近「だよな。俺も」
何だかんだでずっと私といるけど、他の人と話さなくていいのかな?
『ねぇ、もう解散っぽいし折角の機会なんだから他の人と話してきたら?クラスで人気者だったくせに』
宮近「俺はAと居ることができればそれでいいから」
そんな勘違いしそうになること言わないでよ。
それならなんで私の事を好きになってくれなかったの?
なんで私を選んでくれなかったの?
私が幼稚園の頃から好きだったこと、周りの人にはバレていたのに、鋭い海斗が気づかなかったわけが無いでしょ?
きっと海斗の中で私は、本当にただの幼馴染だったんだろうな。
『別に私となんて昔良いだけ話したじゃん』
宮近「なぁ、俺ら今何年ぶりに会ったと思ってんの?」
『それは…、何年ぶりでもいいじゃん』
クロークに預けていたものを受け取って、出口に向かう。
『じゃあね、海斗』
…本当はもっと話したい、でも帰らなきゃ。
海斗とこれ以上いたら苦しくなる。
ついてこないでよ。
このままホテルを出たらきっと、人を待たせることが嫌いな松倉くんはもう待ってる。
クルクル回転しているドアに急いで入って、海斗との距離を稼いで、待ち合わせしている大通りに出ようとした時
宮近「逃げんなよ」
『離して』
腕に感じる、海斗の熱。
海斗はいつも手が温かくて、柔らかくて、でも男らしくて、そんな手に触れられるのが大好きだった。
『ねぇ、お願いだから離してよ…』
"大きくなったらAと結婚する!"なんて言葉をくれてずっと喜んでいた幼稚園。
同級生に意地悪されてすぐに泣いちゃう私をいつも助けてくれた小学生の頃。
"お前ら付き合ってるだろ"とクラスメイトに茶化されて、お互い意識してぎこちなくなることもあった中学生の頃。
別の学校に進学して距離ができて、海斗に彼女が出来た報告をされた高校生の頃。
年上の綺麗な女の人と歩いているのを見た大学生の頃。
走馬灯のように記憶が呼び戻される。
全部全部、今思えば苦しくなるから忘れたい記憶なのに。
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作者名:愛生 | 作成日時:2022年2月6日 23時