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廊下に出て、通話ボタンを押した。





『…もしもし』


「A、俺だけど」





電話越しに聞こえるのは、紛れもなく今日の朝見かけた海斗の声。





『オレオレ詐欺なら通報します』


宮近「相変わらずひでぇな」


『なに。私電話番号教えてないよね?』


宮近「この前元太にフットサルで賭けて勝った時に教えてもらったんだよね」


『個人情報保護法って知らないわけ?』


宮近「知ってるよ?」


『だったら、』


宮近「ねぇ」


『なに。話してる途中なんだけど』


宮近「あんまキレんなよ。ちゃんと話あるから聞いて」





わざわざ電話してきてまで話したいことって何?





『今朝一緒にいた綺麗なお姉さんの話?』


宮近「は?」


『お酒、一緒に選んでた綺麗な女の人』


宮近「なんでそれ知ってんの」


『いい感じの人いるんじゃん』


宮近「嫉妬?」


『そんなんじゃない。私 彼氏と食事中だし、海斗のことなんてもう関係ないからやっぱり電話切るね』


宮近「お前さ、だから話聞けって」


『聞くことも話すことも無いから。じゃあね』






話なんて何があるの?


あの女の人と付き合うことになりました、とか?




色々思考回路後巡って頭が痛くなりそう。


廊下にしゃがみこんで、心を落ち着かせる。





松倉「A?」





顔を上げると、いつの間にか私の目の前に目線を合わせるようにしゃがんでいた松倉くんがいた。





『…ん?あ、ごめんね。ご飯中に席立っちゃって』


松倉「大丈夫?具合悪い?」


『ううん、大丈夫だよ』


松倉「電話誰だった?」


『迷惑電話。なんか疲れちゃった』


松倉「そっか。じゃあさっさとご飯食べてお風呂入って寝よっか」


『うん』





私の頭を撫でて、手を引いてその場から立たせてくれる。





ご飯を食べて、お風呂に入って、寝る準備を済ませて、ベッドの中。


仰向けで寝転がる松倉くんの腕に巻きついて、頭をすりすりと付けると、また優しく頭を撫でてくれる。





松倉「どうした?」


『海斗くん』


松倉「んー?」


『…今日、ダメ?』


松倉「え?」


『甘やかしてくれるんでしょ?』


松倉「っ、いいよ」







海斗のことなんか知らない。


再会しても、私の人生にはもう必要なかったんだ。


私には大切にしなくちゃいけない松倉くんがいて、海斗はただの過去の人で


だから、もう気にしてない。


気にしちゃいけない。

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作者名:愛生 | 作成日時:2022年2月6日 23時

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