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松倉くんと私が選んだ映画は、ある日主人公がタイムトラベルをして家族や恋人、友人とのありふれた幸せの大切さに気付かされるような内容。
…私が今タイムトラベルして、海斗と無邪気に遊んでいたあの頃を生きるとしたら、どんな選択をするんだろう。
海斗と同じ高校を選んでいれば、何かが変わっていたのかな。
ただ、そうなると松倉くんには出会えなかったかもしれない。
そんなことを考えていると涙が出てきて
でも隣にいる松倉くんにはバレたくない。
『私ちょっとトイレ行くね』
松倉「ん、わかった」
こっそりティッシュを持って行って、涙を拭いてリビングに戻ると、松倉くんはさっきの所で映画を止めてくれていた。
『ごめんね、待っててくれてたんだ』
松倉「だって話進むの嫌じゃない?」
『うん、ありがとう』
隣に座り直すと、何も言わずに頭を撫でてくれてさっき泣いていたのがバレてたんだなと自覚する。
再生ボタンを押して映画の続きが流れる。
松倉「ごめん1本だけ吸っていい?」
タバコの箱をチラつかせてきて 私が頷くと、松倉くんは好きな仕草をする。
吸った後、煙を吹く時に見える綺麗なフェイスライン。
少しだけ尖った唇。
やっぱり私は、海斗なんかより松倉くんが好き。
何考えているかなんてわからない海斗より、素直に伝えてくれる松倉くんの方がいい。
私に嘘をついて無理にご飯に誘ってきたりしたくせに
実際は女の人に困ってない海斗なんかもう知らない。
松倉くんは優しくて、私の事を大切にしてくれて、ダメなところなんてないよ。
映画は、主人公とヒロインの際どいシーンになっていて、松倉くんの様子を見ると映画を見ながらまたタバコを咥えていた。
こういうシーンになると、微妙な空気になって少し苦手。
松倉くんはいつも平気みたいで、少し悔しくなる。
吸った煙を吹ききった頃、松倉くんの顔を覗いて短いキスをしてみても変わらず冷静で。
松倉「どうしたの」
『ダメだった…?』
松倉「ダメじゃないけど、タバコ持ってるから危ない」
『じゃあもうしない』
ドキドキするのは私だけなんだ。
やっぱり悔しい。
松倉「いや、してよ」
『タバコ持ってるもん』
松倉「わかったって。ほら」
タバコの火を消して、目を瞑ってこっちを向いてくる。
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作者名:愛生 | 作成日時:2022年2月6日 23時