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松倉「見たところだと、相手一人しかいないけど」
宮近「みんな先に帰っちゃったんですよ」
松倉「でも会社の人じゃないですよね、幼馴染くんは」
宮近「Aの会社の取引先に勤めてます」
松倉「へぇ」
俗に言う修羅場のような景色。
ここまでピリついている松倉くんを見るのは初めて。
『…あのね、松倉くん』
松倉「香水」
『え?』
松倉「この匂い、俺覚えてるよ」
あの日は本当に仕事の関係で飲みに行ったのに、今日はふたりきりでの飲みだったから、否定することも出来ない。
松倉「俺の彼女勝手に連れ回してここまで酔わせないでくれませんか?」
『勝手に飲んで酔ったの、私が悪いから』
松倉「Aは黙ってて」
どうしよう、私のせいで海斗が責められてる。
私が勢いで松倉くんに怒られてもいいと思って飲み慣れていないもの飲んだから
私が海斗の誘いを受け入れたから
全部私のせいでふたりに嫌な思いをさせている。
宮近「…だったら、その前にもっとAの気持ち考えてあげたらどうですか?」
なのに海斗は、私を味方するようなことを言ってくるから、本当に狡い。
さっき"怒られとけば?"なんて言ってきたのはどこの誰よ。
松倉「は?」
宮近「海斗の中で一番海斗なのは俺らしいですよ」
『海斗、何言ってんの…』
味方をしてくれたと思ったら、私が言ったことを変なところで爆弾投下してくる。
松倉「A、家帰ったら話したいことある」
『やだ』
話したいことってなに?
このタイミングで話したいことなんて、別れ話しかないでしょ。
松倉「いいから」
『やだ!話したくない』
松倉くんを失いたくないから、捨てられたくないから、話なんて聞きたくない。
松倉「駄々こねないで。いつも言うこと聞いてくれるでしょ」
『やだよッ…』
松倉「泣いても無駄」
グッと引っ張られて、車の方に歩き出す松倉くん。
地面に私の涙のアトがポツポツと見える。
…今日は泣いてばっかりだ。
宮近「あの。余計なお世話かもしれないですけど、モラハラって知ってますか?」
松倉くんが掴んできた手を、海斗はいとも簡単に解いて
顔は笑っているけど、目が笑っていない。
この表情、海斗が本気で怒ってる時の顔。
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作者名:愛生 | 作成日時:2022年2月6日 23時