うそ、ほんと ページ7
「どうやらまだ〜、状況を飲み込めていないようだな〜」
先生がわざとらしく、間延びした声で言う。
「なら、これでどうだ」
腕時計の時計部分を押す。
その瞬間、ダーンッ！！！という爆発音と共に、大きな揺れが起きた。
てんじょう にある電気も振動でガタガタと音を立てる。
混乱と恐怖が渦巻いて、皆んな終始無言になっていた。
自分も例外ではなく、久しぶりの緊迫感に自分の手を握りしめた。
誰かが呟いた「なんだ...？」と言う言葉が、耳に残る。
「ロックを解除した。廊下に出られるよ」
多分、ドアのことだろう。
人質を逃したくないはず、だとしたらさっきの爆発で教室を離れ小島状態にさせたと考えて良いのか...？
そうやって考えていると、生徒がまばらに立ち上がり廊下へ外の様子を見に行く。
それに着いていくように、他の生徒も小走りで廊下に向かう。
自分は、人が密集したところがあまり好きではないので、また後で見ることにした。
「烏間は行かないのか？廊下」
教室にいるのが私と先生だけになったとき、彼がそう私に話しかけてきた。
「ひとがみっしゅ、してるとこ、すきじゃないです」
緊張で呂律が回らない。
先生と目が合う。
握りしめた手が震える。
こういうのって、こんなに怖かったっけ。
修学旅行の時、どうしてたっけ...
修学旅行の班行動で、有希子ちゃんとカエデ...榛名ちゃんと誘拐されたことがあった。
その時はあまり、恐怖感を覚えていなかったように思える。
___卒業から、あと7日で3年が経つ。
基本的な体力作りはしているものの、あの1年よりも長い月日が立っている。
精神が鈍ってしまうのも、認めたくないが仕方がない。
目の前にこのクラスを人質にとっている犯罪者がいる。
恐怖で、握りしめた手に爪がより深く突き刺さるのを感じた。
「...そうか」
え...？
びっくりした。
いま一瞬、彼の表情が冷徹なハイジャック犯の顔から、いつもの柔らかい優しい笑みが溢れたような、気がした。
その時、廊下からキャー！！！と女生徒であろう悲鳴が鳴り響く。
先生は、きびすを返して廊下へと出ていった。
その顔は、私の席からは影で、よく見えなかった。
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作者名：はるさめ | 作成日時：2021年11月26日 0時
