朝 ページ32
眠い。本当に眠い。
我々3年A組は担任に人質にとられ、一夜を越したのだが...。
机は硬くて安眠とは程遠く、全く眠れなかった。
体操しながらウトウトして、甲斐くんといわくらくんに笑われた程だ。
"こ、コイツ立ったまま寝てる..."
"やばっ..."
"おきて、る..."
"半寝じゃねーか笑"
"ほらそこ、ちゃんと踊りなさい"
朝ごはんのパンと牛乳も食べる気になれない。
そもそも、私はご飯派だ。
「許さない...あんたのせいで、蓮は死んだ...！
アンタのせいでっ！！」
前からただならぬ叫び声が聞こえて、思わず顔を上げる。
あの女子生徒、茅野さんを恨んでいると思われる彼女が茅野さんに殴りかかっていた。
周りの男子生徒が止めていたが、彼女の殺意は本物だった。
あそこまで人を好きになれるもんなんだな〜、としみじみと思う。
じっと見つめていると、ふいに下にパンがひとつ落ちていることに気がついた。
自然と茅野さんの方を見ると、やはり机にパンはなく...
「おはよう、茅野さん。これ。食べて、いいよ」
自分の分のパンを茅野さんに渡す。
「え？でも烏間さんの分...」
戸惑いながら言う彼女に、
「私。朝は、ご飯派」
と理由を説明した。
「あ、ありがとう？」
まだ戸惑っていたが、受け取ってくれて嬉しかった。
単純だなぁ〜と自分でも思う。
「じゃ。」
自分の席へ戻ろうとすると、呼び止められた。
「あ、あの...話していかない？」
一瞬、脳内にクエスチョンマークが浮かんだが、私と話したいんだ、という意思を汲み取る。
「う、ん。いいよ...」
...それから会話が止まってしまった。
何か話を振られるかと思いきや、そうでもなく。
仕方がなく、私が話すことにした。
「えっと、ご趣味は...？」
「いやお見合いかい！」
元気で見事なツッコミに驚く。
「あ、ごめっ！」
慌てて茅野さんは謝るが、面白かった。楽しい。
「全然、おもしろい
...芸人さんが好きなの？」
「あ、いやプロレスとかが好きで...」
プロレス...、アチョー！とかだっけ？
「へえ〜。珍しい？ね」
女性、しかも女子高生で好きな人がいるのは珍しいと思いながら、そう口にする。
「そうなの！だから同志がいなくて...！」
会話の熱が上がる茅野さんは、顔の疲れも昨日に比べたら大分良くなっている。
良かった、と私は安堵の息をついた。
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作者名：はるさめ | 作成日時：2021年11月26日 0時
