過去 ページ21
朝、学校に来ると教室が騒がしい。
辺りを見回してみると、澪奈ちゃんの机に落書きがされていた。
"ドーピング野郎" "死ね" "消えろ"
色んな悪口が書き込まれている。
「なに...これ」
「景山って、ドーピングしてたらしいよ〜
あんたも関わらない方がいいんじゃない？」
知らない女生徒に声をかけられるが、無視して雑巾を取りに行く。
取りに行った雑巾で机をゴシゴシと擦ってみるが、マジックペンで書かれているせいか中々落ちない。
こんな机、澪奈ちゃんに見せたら傷つくことなんて分かりきっている。
澪奈ちゃんが来る前になんとか落とさないと。
擦る速度を早くしても、あまり色が取れなくて焦って...
格闘していると、後ろに気配を感じた。
振り向くと
「れい、なちゃん...」
茅野さんと澪奈ちゃんがいた。
「澪奈ちゃん、行こ」
とりあえず見させないように、廊下に連れ出そうと彼女の手を握るが動く気配がなく...
茅野さんと女の子が何か話しているが、全く耳に入ってこなかった。
「澪奈ちゃん...？」
大丈夫？、ともう一度呼びかけてみる。
「私は、何もやってない」
私の手を少し強く握られた。
分かってるよ。信じてるよ。
そう、気持ちを込めて
「うん。トイレ、付き合ってよ」
無意味に理由をつけて、教室から抜け出した。
それから澪奈ちゃんは、クラス中から無きものとして扱われて、
私も無視までとはいかないが、陰口の時に名前の上がる常習犯になった。
"猫被り" "良い子ちゃんぶってる" "きもい"
なんとも思わなかった。
慣れてるし、人の意見なんか気にしてられないから。
それからは澪奈ちゃんといる時間が増えた。
茅野さんと澪奈ちゃんがいる時間が無くなったからだ。
茅野さんも無視に加担していた。
おどおどしていて、自分の意見を言えない...大人しい子の典型だった。
それも生きるすべだから仕方のないことだけれど。
自分がもう少し寄り添っていたら、担任にもっと強く訴えていたら、状況が違っていたかもしれない。
自分はなんとも思わない。
__澪奈ちゃんは無視もされて、陰口もいっぱい言われて耐えられる訳がなかった。私と澪奈ちゃんは違うから。
担任に強く訴えていたら...
__聞く耳を持たない先生に、もっとずっと何回も言っていたら、こんなことにはならなかったかもしれない。
先生に失望したのは、私が澪奈が救えるというおごりからだった。
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作者名：はるさめ | 作成日時：2021年11月26日 0時
