神からの贈りもの【3年A組】【暗殺教室】 (ページ19)

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のこされた者ページ19

「A...！」

夜の学校のグラウンドで、校舎を見上げながらブロンドの女が呟いた。

その表情は不安に染まっており、顔も青白い。

「イリーナ、一回落ち着け。あの子ならきっと大丈夫だ」

隣に寄り添っている黒髪の男が言った。

彼の名前は烏間惟臣。防衛省で働いている。

彼もまた、少し険しい表情をしていた。

「でも、そんな補償ないじゃない！こんなメール残してるのよ！？」

彼女の名前は、イリーナ・イェラビッチ。元暗殺者で、現在は防衛省職員。

彼女らが学校に、しかも夜にいるのは理由があった。

彼女は携帯の画面をさらけ出す。

そこには、烏間A...人質になっている家族からの最後の連絡が入っていた。

"ごはんありがとう"

"かぞくにしてくれてありがとう"

今日のお昼ごろにこの意味深なメッセージに気付き、何度連絡をしても既読はつかぬまま、夜になってしまった。

挙げ句の果てテレビをつけると、先生が生徒を人質に取ったニュースが入り...

そこは紛れもなくAが通っている学校で。

いつまでも帰ってこない彼女に痺れを切らし、学校まで様子を見にきたのだった。

「あの子は暗殺教室で育ったんだ。身を守るすべはある」

惟臣がそう言うが、イリーナは納得出来ないようだ。

「そうだけど...やっぱり私だけでも乗り込んだ方が」

家族が人質に囚われている、そんな状況で冷静に考えるのはとても難しい。

イリーナも例外ではなく、今にも学校に飛び込みそうな勢いだ。

「俺たち防衛省が絡んだら、事態がもっと大きくなる
それこそ人質が殺されてしまうかもしれない」

そうしたらAも...

と、いうことは言わなくても分かったのだろう。

「...わかった」

彼女はしぶしぶ納得したように頷いた。

「大丈夫、大丈夫だ」

そう言った彼の顔も、"大丈夫"と言うにはあまりにも不安げだ。

"Aがそっちにいったら、追い返してくれよ"

惟臣は空を睨み、そう彼に喋りかける。

まだ三月の夜風は冷たく、心配も募るばかりだった。