脱出 ページ17
トイレに行きたくて、美術室からそのまま向かった。
そして今教室へ帰っているのだが、うるさい...
"助けて"
"なんで誰も気づいてくれないの"
そんな声が聞こえてきた。
助けを求めて叫んでいるのか...なるほど
でも悲しいことに、私達には気づいてくれないと思う...個人的な見解だけど。
そして私は...騒がしいところはあまり好きではない。
情報量が多いし、頭も痛くなる。
うるさい場所に入るのは少し気が引けるが、教室に入ってバイオリンを持ち、どこか静かな場所を探した。
トイレ前の廊下。
ここなら人も来ないし、少し静かだ。
何時間かぶりにバイオリンが弾ける。心が躍るよ...！
バイオリンをケースから取り出して、構える。
最初に弾く曲は、『パリは燃えているか』
悲壮感の裏に、力強さが感じられる。まさに名曲だ。
ずっと感覚に身を任せていると、男子生徒がトイレに向かって走ってきて、集中の糸が切れる。
違う場所で弾こうとも考えるが、なんだか緊張感を削がれてしまい、そろそろ落ち着いた頃だろうと教室に帰ることにした。
部屋に入ると視線を感じるのもいつものこと。
昼ごはんのおにぎり、3個のうち1個だけ食べることにした。
ご飯貰えないかもしれないし...
おにぎりを片手に、本を開く。
私が今読んでいるのは"聖書"だ。
皆んなが知ってるベストセラー。キリスト教のアレ。
割と物語っぽくて面白い。
たまに人の名前の長文羅列があって、読む気が失せるが...
「ねえ、烏間〜
何読んでんの？w」
いわくらくんが聞いてきた。
いつもこんなに話しかけてこない。暇なのかな...
「せいしょ」
「...？ふーんwおもろい？それ」
「おもしろい」
「へえ〜」
なんだか変な人。
もう話しかけてくる気配もないので、また本の中に視線を落とした。
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作者名：はるさめ | 作成日時：2021年11月26日 0時
