せんせい ページ16
「...これから、お前には苦痛がのし掛かると思う。
知って後悔する事も真実として、聞かなければならない」
先程とは対照的に、真剣な顔で見つめられる。
「でもこれは、これからのことは、あいつらにとって、とても大切なことなんだ。」
「できる限り、あの教室にいて欲しい
どうしても無理な場合は、この美術室にいて良いから」
「わたしは、そんなに、弱くない、です
でも、...ありがとう、ございます」
大切なこと...まだ状況を理解できていないが、何か先生が生徒達の何かを変えようとしていることは分かった。
そして、真実が私にとって酷なものだということも。
でも...
「なんで、私が...もっと警戒したほう、が、いいです」
「私が携帯とか、とったら、どうするんですか？」
なぜ私にそんなに気を許す。
なんで...
「でも、取らないだろ？」
そう言われたら、顔を縦に振るしかない。
「そういうことだ」
...また笑った。
犯罪者なのに、騙されそうになる。
なんだかこの感じはあの時に似ている。
殺せんせーがあの教室を"掃除"したときみたいだ。懐かしいな...
私達の心を入れ替えさせようとするような、そんな感じ。
やり方は全然違うけど...
その時、ドアからノックが鳴った。
「ああ、...もう帰って良いぞ。引き止めて悪かった」
「いえ、だいじょぶ...です」
真実...覚悟をしておかないとな、と思いながら
一礼して美術室を出る。
外には茅野さんがいて、とりあえず会釈をすると目を逸らされた。
まあ...いいや。
そして私は教室へ帰ったのだった。
「なあ...烏間。君は俺を、誰に重ねているんだ...
俺は、お前の"先生"にはなれないのか...？」
そんなことを彼が呟いていたのは、誰も知らない。
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作者名：はるさめ | 作成日時：2021年11月26日 0時
