彼女のこと ページ13
ある日の放課後、担任の先生に呼ばれて職員室に行くと、職員会議の真っ最中。
あとで教室に行く...と言われたので、教室で待っていたのだが、なかなか来ない。
早く家に帰ってバイオリンを弾きたいのに...
「う〜ん、ちょっと、ちょっとだけ」
普段はうるさいと感じる人もいると思うから、教室では放課後であってもあまり弾かない。
廊下へ出て、他の教室の様子を観察する。
他クラスの教室は、とても静かで誰もいないようだった。
少しだけ、弾こう。
だって、やることもないし、弾きたいし...
心の中で言い訳をならべながら、ケースから楽器を取り出した。
「____〜♪」
バイオリンを構えて、音を鳴らす。
その音はやがて、音楽となり曲を紡いでゆく...
ああ、楽しい...！やはり音楽は安らぎを与えてくれる。
弾きながら、そんなことを思った。
「...すごいね、バイオリン？」
急に声がして、驚く。
振り向くと、女子生徒が立っていた。
「！？ええ、えっと...」
「最近、転校してきた子だよね？
あ、同じクラスの景山澪奈です。教室に忘れ物取りに来て...」
景山...と名乗った生徒は、柔らかい笑みを見せながら喋る。
「ごめ...、うるさ、かった？」
邪魔だっただろうか...
恐る恐る聞くと、
「全然。綺麗な音だったよ！」
と言ってくれて、純粋な善意だと分かりほっとする。
「ありがとう...、とても、うれしい」
「ふふ、どういたしまして
ねえ、貴女の音楽もっと聞きたい！から！友達にならない？」
バッ、と距離を近づけてきて、つい後退りをした。
「えっと...？」
「まあ、嫌って言われても全力で絡みにいくんだけどね笑
よろしくね、A」
「名前、なんで」
知っているんだ...？
と言おうとすると、
「なんでって、同じクラスだから当たり前じゃん」
と返答が返ってきた。
「それも、そうか
よろ、しく...景山さん...」
クラス全員の名前を覚えていない自分に後ろめたさを感じつつ、会釈をした。
彼女は笑って...
「澪奈でいいよ笑」
__こうして、私達の交流は始まったのだった。
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作者名：はるさめ | 作成日時：2021年11月26日 0時
