始まりの日 ページ2
朝。鏡の前で、笑ったり発声練習をする。
「アメンボ、赤いな、あいうえお」
でも朝は時間がないからずっと"あ"しかできてない。
まあ...少しは意味があるだろう。と希望をこめて。
卒業式まであと10日。
残念ながら友達もいなくなってしまった...ので、未練も何もないが、なんだか気が引き締まる思いだ。
「A、おはよう！」
リビングに向かうとイリーナが笑顔で振り向いた。
机の上には凄く豪華な...ちらし寿司やらサラダやらが置いてある。
「おはよう。...なに、これ」
戸惑いながら席に着く。
なんで朝からこんなものが？
「え〜？今日何の日か覚えてないの！？」
「？」
何だろう、と考えても分からない。
「今日は...！Aがうちの子になった日よ！記念日！」
「それで...？」
「愛する我が子の為に、朝から豪華にしたの！」
とぷりぷりしながら言われたが
「あんまり、歳はなれてない」
「う"、き、気持ちは母親なの！」
イリーナは確か20代前半。姉妹の歳の離れ方だ。
すると、おみくんがコホンと咳払いをした。
「普通の家庭は、朝からこんなに作らないが...イリーナも頑張って作ったことだし
まあ...あれだ。...今日まで無傷で育ってくれて、ありがとう」
顔をそらされてしまい、どんな表情をしているのかは分からなかったが、こんなに自分のことに親身になってくれている。
その事実が、とても嬉しい。
「ヒュー！照れちゃって惟臣ィ！あ、サラダ作ったのは惟臣なのよ〜？」
「うるさい」
おみくん照れてるんだ。珍しい。面白い。
最近、というか殺せんせーがいなくなった日から、おみくんは前よりずっと人間らしくなったような気がする。
本当にたまにだけど、笑うようにもなった。
「あっもう時間！さっさとご飯食べる！」
「うん」
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作者名：はるさめ | 作成日時：2021年11月26日 0時
