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立場的対立は勿論フィクション
＊
シュバッ、と聞き覚えのある空気を切る音と共に視界が変わった。
「ここは。」
「さっきの地図がさしてた場所。」
そんなこと言ったって……空き地しか広がっていない。
もしかするとオッパのくれた地図が少し違っていたのかもしれない。
もしかするとタクシーの運転手さんが少しズレたところと勘違いしたのかもしれない。
そう思い近隣を見渡すも、それらしき家はない。
彼らの言っていたことは本当だということなんだろうか。
思わず敷地内に歩みを進めると、後ろから不意に声が響いた。
「――あー!Aヌナ!!
マク来たぞ、やっと来たAヌナ!」
「え?あ、本当だ!
待ってましたよヌナ、今日早朝の便で着いたと聞いたからずっとここで待ってたのに……俺たちが夜ご飯を食べている間に男を連れて現れるなんて……
もうEXOと合流かぁ……厄介だけど彼ならさして問題じゃなさそうだねルーカス。」
警戒は解いてないのか私に着いて敷地内に入ったカイさんがちら、と私を見る。
「……知り合いか。
能力狩りの奴らと。」
「彼らが……だから違うって言ってるじゃないですか。
彼らとは初対面です。」
じゃあなんで名前を、と言いかけたカイさんを遮ったのは先ほど初めに声をかけてきた、ルーカスと呼ばれた男。
「えっ酷い、俺ほどイケメンな男を忘れたんですか!?
なんちゃって……じゃあ、これなら思い出してくれる?
なぁ、A。」
喋りながらグニャグニャと顔を変えるルーカス君をまじまじ眺めていると、それは段々と見覚えのある顔に形を変えた。
「おじいちゃん……!?」
「さぁA、じいちゃんと一緒に帰ろう。
可哀想に枷まではめられて……分かるだろう、そいつらは悪い奴なんだ。
そいつらから逃げるためにじいちゃんは家を捨て、死んだことにしていたんだ。
じいちゃんが今住んでいるところには、その枷を外せる奴もいる。
お前の願いである能力に頼らない生活だって送れる。
このままそこにいたら、お前の能力を強制的に悪用されてしまうぞ。
――さ、一緒に帰ろう。」
紛れもなく祖父だ。
祖父の顔、祖父の声、そして私が能力を好ましく思ってないことも知ってる。
そして言い方から、私が身内と親しい人にしか明かしていない能力の反動も知っているとわかる。
私がカイさんに急に襲撃されたのも確かで、多かれ少なかれ私も彼らに対し少しの不信感を抱いていたのもまた事実。
私は一歩、彼らへの方足を踏み出した。
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