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＊
「A、さん?
その、朝ごはん食べに行こ。」
ノックの音と共に、控えめに開いたドア。
そこから顔を覗かせたのは、白い太縁サングラスの男の人。
全く何も予想していない展開に思わず小さく噴き出すと、安心したようにその人はサングラスを外した。
「よかった……笑ってくれて。
俺はテイル。よろしくね。」
道中でなぜそんな登場の仕方をしたのか聞いたところ、ヘチャン君に促されたらしい。
「俺、あんまり感情とか表現するのが得意じゃないから、さ。
でもジャニが凄い可愛がってるって聞いたからどんな子かなって気になったりもして。
どうしようかと思ってたら朝一番にこれを付けて会いに行けば笑ってくれるし話題にもなるってヘチャナに言われて……
途中でマンネラインからやめとけって言われたからどうしようかと思ったけど、やってよかった。」
つまり印象緩和の為ということか。
だいぶ独特な手法ではあったが、確かに私は彼に比較的いい印象を抱いたので成功になるだろう。
「まぁ、昨日目に少しダメージを受けてるからあんま眩しいとこだとしばらく保護のためにサングラスつけるつもりではあるんだけどね。」
似合ってる?ともう1度サングラスをかけてみせるテイルさん。
「似合ってはいますが……それだと何か安っぽくてネタっぽくなるのでちゃんとした奴の方がかっこいいですよ。」
「随分直球で褒めてくるね、もっと気難しい子だったような記憶あるんだけどな……
まぁこれは少しの間の為だけの保護目的だから……いいや。」
恐らく私が祖父(ルーカス君)に会っていた時のことを言うのだろう。
私は今も昔もあまり愛想を振りまくタイプではないと思っているが。
「自分の意見は言うべきだと、親しいオッパ達に教えてもらったので。」
「……あぁ、その通りだよ。
生きてるうちに俺たちは数えきれないくらい『選択』を迫られることがある。
その時、俺たちはどちらか1つを捨てて、どちらか1つを選ばないといけない。
極稀に、両方を取ることもできるけど……選べない方が大半だ。
また、時にはとてつもなく大きな片方を捨てることだってある。
それでも、選ばないといけないんだ。
どちらか1つ。
より、後の自分が振り返って後悔のない方を。」
彼にもそういう経験があったのだろうか。
安っぽいサングラスの奥から、真っ直ぐに見つめられる。
昔、君を見たときに、いつか必ず伝えようと思ったんだ、と呟くテイルさん。
「……まぁ、今の君ならきっと大丈夫だ。」
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