Pioneer my Way (ページ32)

今日:9 hit、昨日:18 hit、合計:25,565 hit

032 ページ32

＊

騒然とする室内。

「あれ、もしかして未だに何とかさんって呼ばれてるんですか?

そうとしか呼ばないとでも思ってましたか、彼女の連絡先の名前は過半数『オッパ』ですよ?」

「……じゃあ、あの日のオッパってもしかして。」

チャニョルさんが絶望的な視線を向ける。
その日がどこを指すのかは嫌でも分かる、彼に他のオッパの話をしたことはないからだ。

「ジャニオッパですよ。
一緒に美容院に行ったんです。」

「その時俺はAと約束をした。

もしこっちに来る気になったら俺と同じ髪色にしてくれ。
それまでは俺からAにそういう話はしない。
だから安心して頼っていい、って。

それで今日、マクがAとぶつかった時に髪の毛の色を偶然見て俺に教えてくれたんだよ。」

似合ってるよ、と髪を一房掬われる。
その雰囲気は別段普段通りだったので先ほどの違和感は恐らく気のせいなんだろうが……
普段のジャニオッパとNCTとしてのジャニは少し差があるようだ。

じゃあ帰ろっか、と彼が携帯端末を取り出した時、木が折れる大きな音が響き渡った。

「それで、……俺達が、そう簡単に帰すと、でも?」

床の木を豪快に踏み折って立っていたのはディオさん。
能力を使っているのか、足を中心にして体中に赤いラインが浮き出ている。

「嘘やろ、さっきあんなに能力使っといてまだ俺の重力場に対抗できんの!?
足使えなくなっても知んないよ?」

「彼女は、EXOの保護対象だ……
だから俺らには、足を、手を、犠牲にしてでもAを守る義務が、ある。」

口ではそう言いつつも体は限界なのか、反動だろう、皮膚が裂けるような小さい音と共に少しずつ筋肉から血が噴き出し始めていた。

彼は良くも悪くも厳格な人間だと私は思っている。
恐らくこのまま拮抗すれば言葉通り、四肢が使えなくなってでも能力を使い続けるだろう。

しょうがない。
彼の反動が何なのかいまいち分からない以上底知れない怖さは拭えないが。

ディオさんの足元だけを範囲に定め、能力を発動させた。

「――っ!?A、なんで……」

能力でどうにか立ち上がれていたその体が再び地へ膝をついたその瞬間。
ふくらはぎを始めとした体中の筋肉に激痛が走る。
本当に、筋肉ってこんな音を立てて切れるのかな、というような何とも言えない音が体の中で聞こえた。

「ナイスA。
ヘチャナ、端末位置から対象3名頼む。」

オッパが電話口に言った瞬間、了解、と聞こえ目の前の景色は一瞬で変わった。