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＊
「ごめん……上手く治せない。
無効化、使ってないんだよね?」
私の前で申し訳なさそうに眉を下げるレイさん。
「はい、今は全部解いてますが……
多分あまり相性が良くないんだと思います。
たまにあるんです、無効化できない能力と、あまり効かない能力が。」
初日、彼が『能力の効きが悪い』といったのは私の能力のせいだと思っていたが、違ったようだ。
効きが悪いだけなら、と随分長い時間、治癒してもらった。
そのおかげで少しずつ傷は小さくなったが、止血される前に完全に治りが止まってしまったのだ。
未だにアレな見た目の太ももを見やる。
個人的には膝に近くズボンを脱がないで済んでよかった。
幾ら治癒と言われてもズボンは脱ぎたくないしね。
ただ、お気に入りだったジーンズが駄目になってしまった。
ここに来る前、去年位にオッパに買っていただいたばかりなのに。
これでも少し前までJKというものだった分、それが結構ショックだった。
「とりあえず包帯巻いといたけど……
少し顔色が悪いね、大丈夫?」
「はい、少し疲れただけなので大丈夫です。」
レイさんが気を遣って部屋で休みな、と肩を貸してくれた。
道中、明らかに外出着を着たチャニョルさんが共用のスペースでカイさんとお話ししているのが見えた。
着替えたいだろうに、部屋を空けておいてくれたんだろう。
そっとしておこうとする彼の優しさが嬉しかった。
ベッドでなんとなく携帯端末を開くと、トークアプリに通知が1件。
送り主は『オッパ』。
もし覗かれた時に、誰か分からないように私は実兄を含めた同級生以外のオッパ達の名前を全て『オッパ』で統一して登録していた。
私はアイコンや文脈で誰だか分かるからそれでいいかな、と。
今回はいつの間に撮ったのだろう、私の短くなった襟足から銀が見える後ろ姿をアイコンにした彼だった。
『足のこと、聞いたよ。痛い?』
ずるいオッパだ、と思った。
大丈夫?でも痛くない?でもなく痛い?と聞くなんて。
本当は肩を借りないと歩けない位には痛いが、彼にそれを伝えてもしょうがない。
『少しだけ』。
そう返そうとした時だった。
ヴー、ヴーー、と端末が震えた。
「……もしもし。」
『もしもし、A?今忙しい?』
まただ、と思った。
「こんばんはオッパ、さっきからそうなんですがその聞き方はズルいですよ。」
すると彼は電話の奥でおかしそうに笑った。
『ハハッ、何でだよ。』
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