363話 ページ46
*
「ザック!」
案の定、行く先を見失いキョロキョロと辺りを見回しながら足を踏み鳴らしているザックを見つけると、Aとレイは急いで駆け寄る。
「ダメだよザック、迷子になっちゃう」
「うるっせぇ! おいA、こんな所早く出るぞ!」
「こんな所って……ここ一応、わたしのフロアなんだけど……」
「もうお前のフロアじゃねぇだろうが!」
ギャンギャンと喚くザックの言葉にAははっとする。そうだ。このフロアはもう既に誰のものでもない。主は死んだ。『天使』はもう居ない。真っ白な部屋が連なるこのフロアは────
「────」
「……あぁ? なに急に黙り込んでんだよ」
ザックが怪訝そうにAに目をやる。Aは静かに首を振ると微笑んだ。
「ううん。なんでもない。……なんでもないよ。とりあえず、わたしがエレベーターまで案内するから。ザックも着いてきて」
何か言い返そうとするザックに、有無を言わさぬ態度で歩き出す。不機嫌な気配が漂っているが、ザックがきちんとついてくるのが分かった。手を繋いだままのレイも言わずもがな。
Aは迷わずに進んでいく。知り尽くしたこのフロアの、ただ唯一の出入口へ真っ直ぐと。振り返らず、そして立ち止まらず。
*
ここ、B7フロアにエレベーターはひとつしかない。入口であり、出口である。そんなたった一つの出入口に、Aたちは真っ直ぐにたどり着いた。
「……ふぅ」
このフロアに降り立った時のその場所に戻ってきて、Aは小さく息をついた。ずっと握っていたレイの手を離すと、Aはエレベーターに歩み寄り動作を確認する。
「エレベーターは……うん、二人がスイッチを入れたから、問題なく動くね。──いけるよ、このまま」
Aはレイとザックを振り返ると微笑み、エレベーターのボタンを操作する。エレベーターの扉がガチャンと音をたてて開いた。
眩しい、白いB7フロアと比べてエレベーター内は薄暗く見える。その、色が懐かしい。
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リア(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!二度入ってしまったことはお気になさらず!一気読みしてくださったと聞いて嬉しい気持ちでいっぱいです。かなりゆっくりの更新となってしまっておりますが、今後もぜひ読んでくださると嬉しいです! (2021年2月15日 22時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
あや - すみません、二回も同じ文が入ってしまいました(汗) (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです! 次の展開にドキドキです! 更新頑張ってください! 楽しみに待ってます! (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです! 次の展開にドキドキです! 更新頑張ってください! 楽しみに待ってます! (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 黒白の猫さん» コメントありがとうございます!まさか私の書いた文章でそんな風になって貰えるとは……!?(?)ここからの展開もお楽しみいただけると幸いです! (2020年10月13日 19時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2020年7月13日 20時