352話 ページ35
ようやく目が合ったと確信したザックは自らを落ち着けるかのように、あるいはAに言い聞かせるかのように大きく息を吐く。そして、Aの目を真っ直ぐに見ながらゆっくりと語りかけた。
「……お前は、ホントは死にたくねぇんだろ」
Aは、ザックを振り払おうとはしなかった。ただ、震える瞳で、ザックを見つめていた。
「なんで、そんなこと、聞くの」
「答えろよ。死にてぇのか、死にたくねぇのか」
ザックの問いにAは困惑したように目線を泳がせていたが、しばらくの後にAは恐る恐る口を開く。
「……死にたく、ない」
「だったらなんで『いつでも死ねる』だとかふざけたこと言ってやがる」
「……わたしは、ザックも、レイも殺そうとした。今よりずっと前から、たくさんの人を殺してきた。きっとわたしは、生きてちゃダメなんだ」
「それを俺の前で言ってどーすんだよ。俺はお前以上に殺してんだよ、多分な」
「そんなの……そんなの、………」
続く言葉が見当たらなかったらしいAの顔が苦しそうに歪んだ。
「お前は死にたくねぇんだろ。だったら『いつでも死ねる』だなんてふざけたこと言ってんじゃねぇよ」
ザックが、再び同じ言葉を繰り返す。
「お前は、お前だ。お前の生き死にはお前が決めろ。自分は死ぬべきだ、生きてちゃダメだ、そんな風に誰かに命を決められるようなこと言ってんじゃねぇ。お前が死にたいか、生きたいか、それだけだろうが」
ザックがまくし立てる。真っ直ぐな言葉が染み渡るかのように、Aは黙ってその言葉を聞いていた。
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リア(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!二度入ってしまったことはお気になさらず!一気読みしてくださったと聞いて嬉しい気持ちでいっぱいです。かなりゆっくりの更新となってしまっておりますが、今後もぜひ読んでくださると嬉しいです! (2021年2月15日 22時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
あや - すみません、二回も同じ文が入ってしまいました(汗) (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです! 次の展開にドキドキです! 更新頑張ってください! 楽しみに待ってます! (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです! 次の展開にドキドキです! 更新頑張ってください! 楽しみに待ってます! (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 黒白の猫さん» コメントありがとうございます!まさか私の書いた文章でそんな風になって貰えるとは……!?(?)ここからの展開もお楽しみいただけると幸いです! (2020年10月13日 19時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2020年7月13日 20時