349話 ページ32
「お前は痛くねぇだろ。お前は怖くなんかねぇし、ここは暗くねぇ。俺には、お前が俺たちを殺そうとしてる理由がさっぱりわかんねぇよ」
「だって……人間は……殺さないといけない」
「だからそれがわかんねぇって言ってんだよ! なんでお前が人間を殺さねぇといけねえのか俺にもわかるように説明しろ!」
ザックの言葉に、怯えと混乱がAの中で渦巻き始める。
なぜ、人間を殺さないといけないのか。人間を殺さなければ自分がどんな目に合うのか、身をもって知っている。忌まわしき過去が証明している。それをただザックに伝えればいい。それだけなのに、Aが言えたのはほんの短い言葉だけだった。
「人間は……怖い」
「だから、なにが怖いってんだ。お前、俺が怖くねぇって言ったろ。お前は、俺に嘘をついたのか?」
ザックが脅すように聞いてくる。違う、そうじゃないと首を振った。
「嘘はついてない……」
「だったら、お前が俺たちを殺す理由なんてねぇだろ」
バッサリと言い切るザックの言葉がひどく胸に突き刺さる。理由なんてない。ザックとレイを殺さなければならない理由なんてない。それでも、ここで何か言い返さないと今まで自分がしてきたことを、自分を全て否定されるような気がした。
「ザックに、わたしの気持ちなんてわかんないよ……わたしがされたこと、ひどいこと……またやられるんじゃないかって、いっつもビクビクしてる。わたしの怖さは、ザックにはわかんない!」
出てきたのはわがままのような見苦しい言葉の数々だった。こんなことを言ったら、ザックに呆れられてしまう。怯えたままのAの心はどんどん萎縮していく。
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リア(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!二度入ってしまったことはお気になさらず!一気読みしてくださったと聞いて嬉しい気持ちでいっぱいです。かなりゆっくりの更新となってしまっておりますが、今後もぜひ読んでくださると嬉しいです! (2021年2月15日 22時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
あや - すみません、二回も同じ文が入ってしまいました(汗) (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです! 次の展開にドキドキです! 更新頑張ってください! 楽しみに待ってます! (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです! 次の展開にドキドキです! 更新頑張ってください! 楽しみに待ってます! (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 黒白の猫さん» コメントありがとうございます!まさか私の書いた文章でそんな風になって貰えるとは……!?(?)ここからの展開もお楽しみいただけると幸いです! (2020年10月13日 19時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2020年7月13日 20時