356話 ページ39
「このフロアに、Aの部屋があるの?」
「うん。奥の方に。多分、普通に進んでても気が付かないと思う」
Aの言葉にザックがため息をつくと、頭をガシガシとかいた。
「好きにしろ。ただ、そんなわかんねぇところにあるならお前が案内しろよ」
「あ、うん。もちろん。わたしが案内するよ」
Aは頷くと、座り込んだままだったのを立ち上がる。と、急に立ち上がったその瞬間にふらついたのを慌ててレイが支えた。
「あっ……ありがとう、レイ」
「ううん。A、歩ける?」
レイからの問いかけに、Aは黙り込む。散々動き回った後に大号泣。泣くことは意外に体力を使うものだ、なんてことを考えながら、体幹を支えようと意識を集中させていると。
またもや大きなため息をついたザックがレイに支えられたままのAの腰に手を回すと、ヒョイと担ぎあげる。まるで荷物のように肩に担ぎあげられたAが硬直し、レイが呆気に取られる中、ザックは「案内しろ」と言わんばかりに鼻を鳴らした。
「……ザック?」
「なんだよ。お前の部屋に行くんだろ」
「……連れていってくれるの?」
「お前が案内しねぇと連れていけねぇけどな」
ザックの言葉にAは苦笑した。ふぅ、と一息ついて。「ありがとう、ザック」とお礼の言葉を口にすればザックは興味がなさそうな顔をしてそっぽを向いてしまった。素直じゃない。
「じゃあ、案内するよ。まず、そこのドアから部屋に入ってくれるかな」
「おう」
Aの指示に従いザックが歩き出す。その後ろにレイもしっかりついてくる。
レイとザックが探索中にほとんどのドアを開け放したフロアは、かつてこのフロアで過ごしていた時に散々みた景色とはどこか違って見えた。このフロアも、見納めのようなものだからとついあちこちに目を向けてしまう。
一部屋一部屋、過剰なまでに明かりをつけた白い空間。その白に、血の赤色が散らばると酷く鮮烈なその色が網膜に突き刺さり全身が熱くなった記憶がある。
「おい、次はどうすんだ」
ぼんやりと過去を振り返っていたAの意識をザックの声が引き戻した。
「あぁ、ごめん。次は──」
道順を説明しながら、フロアを見回す度に胸に走る痛みの正体を考える。罪悪感か。それとも、寂しさだろうか、と。
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リア(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!二度入ってしまったことはお気になさらず!一気読みしてくださったと聞いて嬉しい気持ちでいっぱいです。かなりゆっくりの更新となってしまっておりますが、今後もぜひ読んでくださると嬉しいです! (2021年2月15日 22時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
あや - すみません、二回も同じ文が入ってしまいました(汗) (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです! 次の展開にドキドキです! 更新頑張ってください! 楽しみに待ってます! (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
あや - 思わず一気読みしてしまうほど面白いです! 次の展開にドキドキです! 更新頑張ってください! 楽しみに待ってます! (2021年2月4日 16時) (レス) id: e816ef2773 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 黒白の猫さん» コメントありがとうございます!まさか私の書いた文章でそんな風になって貰えるとは……!?(?)ここからの展開もお楽しみいただけると幸いです! (2020年10月13日 19時) (レス) id: d0c52e385f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2020年7月13日 20時