461話 ページ48
Aは多少頭の整理ができてきたが、ザックの方はそうもいかないようだった。やはりぽかんとした顔で黙ってレイの話を聞いていた。
「……よくわかんねぇけど、下に降りればいいんだな」
「うん……地下に降りるためのスイッチならこのフロアのどこにあるか覚えてるし……それで大丈夫なはず」
レイは少し戸惑いながらもそう言い、ザックを見上げる。ザックはそんなレイを見て、いつものようにニヤリと笑った。
「お前が言うなら、そうなんだと思うぜ。──いくぞ!」
ザックの声には、レイへの確かな信頼がこもっていた。そのことに、きっとレイ自身も気が付いたのだろう。ほんの少しだけ、表情を明るくしたように見えたレイは「……うん!」と嬉しそうな声で応えたのだった。
*
「スイッチは確か……地下のオルゴールの部屋にあったはず……」
レイはそう言いながら玄関へと入っていき、まっすぐにキッチンの方へ向かっていく。地下のオルゴールの部屋、というと、先ほどまでAとグレイ神父が会話をしていたその場所だ。グレイ神父は、まだあそこにいるのだろうか。訊きたいことがある、と言っていたから、きっとあそこで待っている。
Aがそんなことを考えているうちに、レイはあっという間にキッチンへ続く扉をくぐっていってしまっていた。レイの迷わない足取りを追いかけてキッチンに入れば、一番に目に入るのはキッチンの一部分を真っ黒に焦がす爆発の痕跡だった。
「お前、爆発ってなんだよ……」
同じく黒焦げた壁と床を眺めながらザックがぼやくと、レイは申し訳なさそうに肩を縮こます。
「……ごめんなさい。Aは、熱かったよね……」
「うーん。確かに焦げたけど、大したことはなかったから気にしないで」
へらりと笑って見せると、レイは困ったように表情をゆがめる。本当に、もう気にしないでいいのに、と思いながら、Aはさりげなく話題を変えることにした。
「それよりさ、レイ……地下への入り口ってさ、ここだよね」
わざとらしくも床を指し示せば、ザックとレイの視線もまたAの指先に引き寄せられる。地下へと続く床穴の中の階段だ。グレイ神父と言葉を交わした後のAが、今しがた出てきたばかりの場所でもある。レイはしばらく地下への階段を黙って眺めながら、何かを考えているようだった。
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リア(プロフ) - ましゅまろぉさん» はじめまして!コメントありがとうございます。検索では結構埋もれてしまっているはずなのに、見つけてくださって光栄です。応援もいただけてとっても励みになります!ご期待に応えられるようがんばっていきますので、これからもよろしくお願いします!( ¨̮ ) (9月29日 1時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぉ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼しますm(*_ _)mこちらの作品を最近見つけて面白くて思わず一気見していました。これから更新お待ちしています。応援してますꉂ📣 (9月21日 22時) (レス) @page38 id: f13e73b476 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ミミックさん» コメントありがとうございます!長らくお待たせしました。これほど更新が遅れてしまったのに読みに来てもらい、コメントまで!本当に嬉しいです。応援いただきありがとうございます。できるだけ早く続きをだせるよう頑張るので、また読みに来てくれると嬉しいです! (9月13日 12時) (レス) id: 7341473d1c (このIDを非表示/違反報告)
ミミック(プロフ) - 更新再開ありがとうございます。リアさんのペースで頑張ってください。応援してます (9月9日 9時) (レス) @page36 id: 552a25aaf1 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - @高橋_Teretaさん» コメントありがとうございました! そして大変お待たせしてしまい申し訳ありません。もしまだ更新を待ってくれていて、再び読みにきてくださるのであればそれほど嬉しいことは他にありません。完結までは必ず持っていきますので、良ければまたお願い致します。 (9月9日 3時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2022年8月30日 13時