443話 ページ30
ドサリ、と音と立ててダニーは膝をつく。抑えた胸の辺りから鮮血が絶えず流れ出ていた。そのまま、絶望的な表情で、ダニーはレイに定まらない視線を向ける。
「……レイチェル」
「ダニー先生……二人は私が殺したいの」
縋るような響きを伴ったダニーの言葉に対して、レイはただ淡々と言った。中身のない、意味もない、空っぽの言葉。
「……あぁ……そうか、そうだね」
「それに私、もう疲れたの。これで終わりたい。ダニー先生……ごめんなさい。ともには生きられない」
ダニーを見つめるレイの表情が、どこか悲しそうに歪められる。それでもその瞳はやはりどこかが死んでしまっていた。
きっと、ダニーもレイの表情の変化には気づいたのだろう。でも、ダニーにかけられる言葉は全てが冷たかった。
レイの世界に、ダニーの居場所は、なかった。
「……あぁ……あぁ……あぁ……!」
激しく息を切らしつつも、ダニーは声を絞り出して叫ぶ。そしてそのまま、よろけながら立ち上がった。胸を押さえつけたまま、ダニーはふらりと歩き出し、血の軌跡を残しながらリビングの出口へと向かっていく。
それを見て、目まぐるしい状況の変化に指先一本も動かせないほどに硬直していたAは身体の自由をようやく取り戻す。
呼吸も忘れていたようで、頭の中にモヤがかかったような感覚に襲われる。
ただ、次にはAは強く拳を握りしめて、反射的に駆け出していた。ダニーが残した血の痕を追って。
ザックが「おいっ……」と小さく声を上げるが、ザックはAのことを追いかけはしなかった。
部屋を出ていくAの姿を見て、ただ小さくため息をつき。その後には振り返り、そこに立ち尽くす少女を見下ろした。今はもう無表情とは言えない、強烈な感情を孕んだ瞳をザックに向けるレイを。
ダニーと、Aが出ていった部屋の中で。レイとザックは再び見つめ合う。強烈な造花の匂いと、血の匂いが立ち込める、その真ん中で───
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リア(プロフ) - ましゅまろぉさん» はじめまして!コメントありがとうございます。検索では結構埋もれてしまっているはずなのに、見つけてくださって光栄です。応援もいただけてとっても励みになります!ご期待に応えられるようがんばっていきますので、これからもよろしくお願いします!( ¨̮ ) (9月29日 1時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぉ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼しますm(*_ _)mこちらの作品を最近見つけて面白くて思わず一気見していました。これから更新お待ちしています。応援してますꉂ📣 (9月21日 22時) (レス) @page38 id: f13e73b476 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ミミックさん» コメントありがとうございます!長らくお待たせしました。これほど更新が遅れてしまったのに読みに来てもらい、コメントまで!本当に嬉しいです。応援いただきありがとうございます。できるだけ早く続きをだせるよう頑張るので、また読みに来てくれると嬉しいです! (9月13日 12時) (レス) id: 7341473d1c (このIDを非表示/違反報告)
ミミック(プロフ) - 更新再開ありがとうございます。リアさんのペースで頑張ってください。応援してます (9月9日 9時) (レス) @page36 id: 552a25aaf1 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - @高橋_Teretaさん» コメントありがとうございました! そして大変お待たせしてしまい申し訳ありません。もしまだ更新を待ってくれていて、再び読みにきてくださるのであればそれほど嬉しいことは他にありません。完結までは必ず持っていきますので、良ければまたお願い致します。 (9月9日 3時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2022年8月30日 13時