440話 ページ27
ザックが歩き出す気配を感じながら、Aはしばし立ち尽くす。思い出したのは、銃を構えたレイの姿だった。
銃口の奥に、あなたがいる。
無慈悲な孤独の瞳が見ている。
青色が、満たされない闇で満ちている。
青い光の中で、孤独の沼に落ちていくレイの姿。暗闇の中でたった一人駆け出して、逃げ去っていく姿。
───似ているな、と感じた。今のレイはいつかの自分と何も変わらない。
似ているからこそ、あの瞳に見つめられると満たされぬ闇に絡め取られそうになってしまう。レイの孤独に引きずられて削れていくような、そんな感覚に曝される。
何度か引きずられて、絡め取られて、少しずつ削れていって、そうしてわかった。
(わたしじゃ、レイを救えない───)
悲しい。悔しい。それでもそれが現実だった。
Aはレイとザックによって自分自身の足をとる沼からようやく抜け出した。それでもまだその足を絡め取ろうとする暗い過去が心の中には確かに存在する。
救われたばかりの自分が、あるいは未だ過去に足を囚われそうになっている自分が、レイを救う資格なんてどこにある? そんな力が、どこにある?
今の自分にできることはなんだろう、そう思った時に思いついたのは、レイがこれ以上孤独の深みに落ちていかぬようにすること、それだけだった。
すなわち。
この誓いを、守るために。
わたしはあなたに、殺されない。
(──あなたのものにはなれないよ、わたしは)
だってわたしは、わたしだから。あなたを守る、その意志を強く持った、紛れもない一人の『人間』だから。
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リア(プロフ) - ましゅまろぉさん» はじめまして!コメントありがとうございます。検索では結構埋もれてしまっているはずなのに、見つけてくださって光栄です。応援もいただけてとっても励みになります!ご期待に応えられるようがんばっていきますので、これからもよろしくお願いします!( ¨̮ ) (9月29日 1時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぉ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼しますm(*_ _)mこちらの作品を最近見つけて面白くて思わず一気見していました。これから更新お待ちしています。応援してますꉂ📣 (9月21日 22時) (レス) @page38 id: f13e73b476 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ミミックさん» コメントありがとうございます!長らくお待たせしました。これほど更新が遅れてしまったのに読みに来てもらい、コメントまで!本当に嬉しいです。応援いただきありがとうございます。できるだけ早く続きをだせるよう頑張るので、また読みに来てくれると嬉しいです! (9月13日 12時) (レス) id: 7341473d1c (このIDを非表示/違反報告)
ミミック(プロフ) - 更新再開ありがとうございます。リアさんのペースで頑張ってください。応援してます (9月9日 9時) (レス) @page36 id: 552a25aaf1 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - @高橋_Teretaさん» コメントありがとうございました! そして大変お待たせしてしまい申し訳ありません。もしまだ更新を待ってくれていて、再び読みにきてくださるのであればそれほど嬉しいことは他にありません。完結までは必ず持っていきますので、良ければまたお願い致します。 (9月9日 3時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2022年8月30日 13時