438話 ページ25
「………」
「んだよ!! 今の!! 狂ってんのか!! いい加減にしろよ! ふざけんなよ!! 覚えとけよ! このバカ!」
言葉も失って、ただ息をつくAの隣でザックは思いつく限りの悪態をついた。
B3のようなよくできた罠ではない分、なおさらそれに翻弄される自分に腹が立つ。
息を落ち着けて、改めて自分が身を潜めた場所の背後を振り返れば、そこにはこの部屋の主のネームプレートがかけられている。
レイチェル・ガードナー。レイが逃げ込んだであろう、レイの部屋だ。
Aの視線の先のネームプレートをザックも凝視する。もう、字が読めないと騒ぐことはなかった。
互いの視線を見合わせたあと、ザックがゆっくりとドアを開けた。
*
青い人工の月の光に照らされる部屋の中、その中央でレイは静かに佇んでいた。
「……おい。どこまで逃げまわるつもりなんだよ」
ザックに言われて、レイは何も言わずに銃を構えた。Aは咄嗟に身構えるが、ザックは不敵に笑ってみせる。
「……撃つか?」
「それでザックは死ぬ?」
「……お前に殺されるんだったら、先に殺してやるよ」
殺されたいと願うレイにとって、それは救いの言葉でもあったはずだ。そのはずが、レイは静かにうつむいて、力なく銃を下ろす。
「それはもう、ダメなの……ダメだったんだ。最初からダメだったんだね」
独白のようにレイは言う。ダメなのだと繰り返す、もう無駄なのだと言い聞かせる。
「───私、今でも、私は死なないと、殺されないと、ダメだと思ってるよ。だけど、私は穢れているから、きっと神様はそれすら望んでない───私はいらないの。それをね、『殺してやる』って神に誓ってくれたのはザックだった。私が殺されるまで、『守ってくれる』って誓ってくれたのは、Aだった」
噛み締めるように、それぞれの誓いを口にするレイ。暗い瞳で、二人を見つめる。
「でも、神様はいないってわかって……そうしたら、ザックが私の神様になったの」
「……レイ、聞け! 何度も言うが、俺は神様じゃねぇ!」
「うん、わかってるザック」
ザックの叫びは、レイに全てを諦めさせてしまうようで。そんなことを伝えたいんじゃないはずなのに、レイは全部、自分の中で決めつけてしまう。そしてまた、銃を二人に向けた。
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リア(プロフ) - ましゅまろぉさん» はじめまして!コメントありがとうございます。検索では結構埋もれてしまっているはずなのに、見つけてくださって光栄です。応援もいただけてとっても励みになります!ご期待に応えられるようがんばっていきますので、これからもよろしくお願いします!( ¨̮ ) (9月29日 1時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぉ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼しますm(*_ _)mこちらの作品を最近見つけて面白くて思わず一気見していました。これから更新お待ちしています。応援してますꉂ📣 (9月21日 22時) (レス) @page38 id: f13e73b476 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ミミックさん» コメントありがとうございます!長らくお待たせしました。これほど更新が遅れてしまったのに読みに来てもらい、コメントまで!本当に嬉しいです。応援いただきありがとうございます。できるだけ早く続きをだせるよう頑張るので、また読みに来てくれると嬉しいです! (9月13日 12時) (レス) id: 7341473d1c (このIDを非表示/違反報告)
ミミック(プロフ) - 更新再開ありがとうございます。リアさんのペースで頑張ってください。応援してます (9月9日 9時) (レス) @page36 id: 552a25aaf1 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - @高橋_Teretaさん» コメントありがとうございました! そして大変お待たせしてしまい申し訳ありません。もしまだ更新を待ってくれていて、再び読みにきてくださるのであればそれほど嬉しいことは他にありません。完結までは必ず持っていきますので、良ければまたお願い致します。 (9月9日 3時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2022年8月30日 13時