435話 ページ22
いつの間にやらダニーはフロアの闇の中へ姿を眩ませたようだった。
レイはキッチンへの逃げこみ、さらにその奥のバスルームへと飛びこんでいく。ザックが後を追ってバスルームへと踏みこんで、Aもまたその背中に続いた。
「あぁ……?あいつ、どこだ?」
バスルームに入り辺りを見渡して、すぐにザックは首を傾げた。決して広くはないバスルームの中、レイの姿はどこにもなかった。
「隠し通路でもあんのかぁ?」
キョロキョロしながら狭いバスルームの中を歩きながらザックは進み、一番奥のバスタブに目を止める。
「……あ?」
「水が……溜まってる」
ザックが栓を抜き、水がなくなったはずのバスタブに再び濁った水が溜まっていた。
先ほどは、鋭い牙を持った小魚がこれでもかと隠れていた水の中───
「まさか、この中にいるんじゃねぇだろうな」
ザックが嫌なことを思い出したかのように表情をゆがめる。恐らくは自分の手を噛みちぎろうとしてきたあの小魚のことだろう。
しかしザックが躊躇したのはほんの数秒。意を決したようにザックは勢いよく水の中に手を突っ込み───
「いってぇえええ! あっちぃいい!」
Aの目にも見えるほど激しい電流が、ザックの身体を駆け巡り、ザックはバスタブの前から跳ねのいた。
Aはザックに駆け寄るが、感電を考えると触れることもできない。ただ怒り猛るザックの側に寄ることしかできなかった。
「ふざけんなよ!!!!」
「ちょっ……ザック、大丈夫なの!?」
「大丈夫なわけあるか! くっそ、レイのやつなんの嫌がらせだ!?」
常人ならばどうみたって気絶しそうなレベルの電流だったがザックは多少痺れた程度のようだった。
思い返せば、B3。電気椅子に座ったまま数分を耐え切ったザックの強靭さを思い出す。
「やっぱり、これはザックには効かないね」
背後から声がして、Aとザックが振り返ると洗濯機の蓋が開いて、その前にレイが立っていた。
(まさか、洗濯機の中に隠れていたの……?)
なるほど、華奢なレイなら頑張れば入ることができるのかもしれない。だからって普通は入るような場所ではない。
そんな場所から出てきたばかりなのにレイの表情は変わらず平坦で、なんともない顔をしているのだから───それが、異常だった。
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リア(プロフ) - ましゅまろぉさん» はじめまして!コメントありがとうございます。検索では結構埋もれてしまっているはずなのに、見つけてくださって光栄です。応援もいただけてとっても励みになります!ご期待に応えられるようがんばっていきますので、これからもよろしくお願いします!( ¨̮ ) (9月29日 1時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぉ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼しますm(*_ _)mこちらの作品を最近見つけて面白くて思わず一気見していました。これから更新お待ちしています。応援してますꉂ📣 (9月21日 22時) (レス) @page38 id: f13e73b476 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ミミックさん» コメントありがとうございます!長らくお待たせしました。これほど更新が遅れてしまったのに読みに来てもらい、コメントまで!本当に嬉しいです。応援いただきありがとうございます。できるだけ早く続きをだせるよう頑張るので、また読みに来てくれると嬉しいです! (9月13日 12時) (レス) id: 7341473d1c (このIDを非表示/違反報告)
ミミック(プロフ) - 更新再開ありがとうございます。リアさんのペースで頑張ってください。応援してます (9月9日 9時) (レス) @page36 id: 552a25aaf1 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - @高橋_Teretaさん» コメントありがとうございました! そして大変お待たせしてしまい申し訳ありません。もしまだ更新を待ってくれていて、再び読みにきてくださるのであればそれほど嬉しいことは他にありません。完結までは必ず持っていきますので、良ければまたお願い致します。 (9月9日 3時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2022年8月30日 13時