430話 ページ17
───時が、止まった。
刹那の後、ようやくザックの言葉の意味を理解したらしいレイの顔がこわばって。その瞳が、静かに、よどんでいくのがわかった。
その反応だけで、もう答えは決まったようなものだった。それほどまでに明らかな動揺。
それでもザックは満足はしない。答えを、レイの口から聞くまでは。
「おい、ちゃんと説明しろ!」
レイの肩を掴んで、振り向かせて。揺れる瞳を真っ直ぐに見つめて、なおも目を背けようとするレイにザックは怒鳴りつけるように声をたたきつけた。
───と。バンッ、と音がする。
即座にザックとAが音のした方を振り返ると、廊下へ繋がるドアの近くに、ダニーが立っていた。つい今しがた鳴り響いた銃声の元であろう、拳銃を真っ直ぐにザックに向けて───
「───レイチェルに乱暴するのはやめてくれないか、ザック」
銃声に後ずさったザックの目の前で、ずっと俯いていたレイが静かに顔を上げる。
「ダニー先生……」
「やぁ、おはよう」
レイに瞳を向けられた瞬間、ニタニタと不気味な笑みを浮かべていたダニーは表情を一変させ、爽やかに笑む。
その表情は、小さな子どもに向けるような無垢なもの。安心させるような、敵意のない笑顔。しかしそれを見たレイはまた震え始める。何もかもを察してしまったかのように、レイの顔が絶望に染められていく。
「レイチェル……君の代わりに、僕が君のことを全部伝えておいてあげたよ?」
ダニーは悠然とレイに歩み寄る。その言葉の間にもレイの顔は青ざめていき、ダニーの表情は嬉しそうに歪んでいく。
「……あぁ……」
終わりだ、と。絶望の声が、静かに、レイの喉の奥から細く漏れる。レイの瞳から。未だ僅かに残っていた光が消えていく。
そんな、何もかもを映さなくなった暗い瞳をこそダニーは愛おしそうに眺めた。
「あぁ、そんなに暗い目をして……今にも、溺れそうだ」
食い入るようにレイの瞳に魅入るダニーは、ザックのこともAのことももうすっかり忘れてしまったかのように自分と、レイの瞳の中の世界に浸りきっている。そしてザックもまた、そんなダニーを無視して、レイに食いかかった。
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リア(プロフ) - ましゅまろぉさん» はじめまして!コメントありがとうございます。検索では結構埋もれてしまっているはずなのに、見つけてくださって光栄です。応援もいただけてとっても励みになります!ご期待に応えられるようがんばっていきますので、これからもよろしくお願いします!( ¨̮ ) (9月29日 1時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぉ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼しますm(*_ _)mこちらの作品を最近見つけて面白くて思わず一気見していました。これから更新お待ちしています。応援してますꉂ📣 (9月21日 22時) (レス) @page38 id: f13e73b476 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ミミックさん» コメントありがとうございます!長らくお待たせしました。これほど更新が遅れてしまったのに読みに来てもらい、コメントまで!本当に嬉しいです。応援いただきありがとうございます。できるだけ早く続きをだせるよう頑張るので、また読みに来てくれると嬉しいです! (9月13日 12時) (レス) id: 7341473d1c (このIDを非表示/違反報告)
ミミック(プロフ) - 更新再開ありがとうございます。リアさんのペースで頑張ってください。応援してます (9月9日 9時) (レス) @page36 id: 552a25aaf1 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - @高橋_Teretaさん» コメントありがとうございました! そして大変お待たせしてしまい申し訳ありません。もしまだ更新を待ってくれていて、再び読みにきてくださるのであればそれほど嬉しいことは他にありません。完結までは必ず持っていきますので、良ければまたお願い致します。 (9月9日 3時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2022年8月30日 13時