429話 ページ16
ギシギシ音を立てる廊下を通り過ぎて、一階へと至る階段を下りていけば、薄暗い廊下の奥でリビングに続く扉が開かれているのが見えた。
先ほどまで頑なに閉ざされたままだった扉はまるで二人を迎え入れるかのようにわざとらしく開け放たれ、その扉を開けておいたのであろう人物がにやつく顔が想像できるようだった。
そんなあからさまな怪しさを纏っていても、ザックは気に留めない。まっすぐ扉へ向かっていくと、レイが眠るリビングへと足を進めていった。
Aがそれに続けば、すぐにソファの上で静かに眠るレイの姿が目に入ってきた。
その顔は穏やかとは言い難いが、無垢だった。思わず見とれてしまいそうになる整った顔と、ソファから落ちる長い髪。
そんなAを他所に、ザックは複雑そうな表情を浮かべ、つかつかとソファに歩み寄る。
「おい、起きろ。じゅうぶん寝ただろ! 起きろ!」
ザックがレイの肩を揺さぶると、レイは僅かに呻き声をあげて、やがて瞼を開ける。まだどこか目覚めていない、青い瞳がのぞくと目の前のザックを見て見開かれる。
「……ザック?」
レイは困惑したような、不安げな表情を浮かべる。それからすぐに決まりが悪そうに顔を背け、目を伏せた。
「……ごめんなさい。私、足手纏いにならないようにって、思っていたのに」
僅かに震える声色。そんなレイの様子にザックは呆れたようにため息をつく。
「うるせぇ、んなこたぁどーでもいいんだよ。……いいか、レイ、答えろよ?」
レイが首を傾げるとザックの顔を見返す。包帯の奥、鋭い眼光と、レイの不安げな視線が交わる。
真正面からレイを見下ろすザックはどこか威圧するような雰囲気を纏っていて、レイは気圧されたかのよう。
Aもまた、ひりついた雰囲気に呼吸を忘れて二人を見つめていた。
ふぅ、と息をついたザックが、静かに訊く。
「───このフロアにきた人間は……お前が、殺すのか?」
140人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リア(プロフ) - ましゅまろぉさん» はじめまして!コメントありがとうございます。検索では結構埋もれてしまっているはずなのに、見つけてくださって光栄です。応援もいただけてとっても励みになります!ご期待に応えられるようがんばっていきますので、これからもよろしくお願いします!( ¨̮ ) (9月29日 1時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぉ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼しますm(*_ _)mこちらの作品を最近見つけて面白くて思わず一気見していました。これから更新お待ちしています。応援してますꉂ📣 (9月21日 22時) (レス) @page38 id: f13e73b476 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ミミックさん» コメントありがとうございます!長らくお待たせしました。これほど更新が遅れてしまったのに読みに来てもらい、コメントまで!本当に嬉しいです。応援いただきありがとうございます。できるだけ早く続きをだせるよう頑張るので、また読みに来てくれると嬉しいです! (9月13日 12時) (レス) id: 7341473d1c (このIDを非表示/違反報告)
ミミック(プロフ) - 更新再開ありがとうございます。リアさんのペースで頑張ってください。応援してます (9月9日 9時) (レス) @page36 id: 552a25aaf1 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - @高橋_Teretaさん» コメントありがとうございました! そして大変お待たせしてしまい申し訳ありません。もしまだ更新を待ってくれていて、再び読みにきてくださるのであればそれほど嬉しいことは他にありません。完結までは必ず持っていきますので、良ければまたお願い致します。 (9月9日 3時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:リア | 作成日時:2022年8月30日 13時