270話 ページ44
(神様がいないと……私……)
"神はいない"と言ったザックの声が耳にこびりついて離れない。その言葉を何度も反芻してはレイは力をなくしていった。指先が震えておさまらない。
それでも、とレイは必死で立ち上がる。足はしっかり床を踏みしめているはずなのに、まるで身体が宙に浮いて虚空の中に放り出されてしまいそうだった。そんな、得体の知れない感覚。
「薬を……探さなきゃ……」
弱りきったザックと、どこか様子のおかしいAの姿が脳裏に浮かぶ。
(私が、薬を)
取り憑かれたように頭の中で同じことを繰り返し考えながら、レイは先に進もうと顔をあげた。と、顔をあげたレイの目の前にいたのは先ほどまではいなかったはずのグレイだった。グレイはレイを見下ろし、ゆっくりと口を開く。
「一人でどうしたのだね、レイチェル・ガードナー。ザックとリアはどうした?捨て置いたのか?」
「違う!ザックが動けないから私が薬を探しに来ただけ!」
不敵な笑みを浮かべるグレイの皮肉な声に、レイは激しく言い返した。
「ダニー先生がこのフロアに来たことも、薬を持っていることもわかってる……だから……」
「あぁ、ダニーか。あの者は今、好き勝手に行動している。本当に、いつからああなったのか……。しかし、そういえばダニーがここへ君を引き入れたのだったな……」
「……それより、ここに薬はないの? ダニー先生は薬を持って、どこへ行ったの?」
「ダニーは様子がおかしいようでな。少し姿を見せたが……さぁ、今はどこにいるのか。ただ、少し勝手が過ぎたのでな。私がいくつか薬を取り上げている」
「じゃあ、薬がどこにあるかあなたは知っているの!?」
「あぁ」
「お願い、薬が欲しいの」
レイは必死の声でグレイに詰め寄った。薬が欲しい。懇願するように、背の高いグレイの厳かな面持ちを見つめる。
324人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リア(プロフ) - わごむごむさん» コメントありがとうございます!まだまだ未熟なので上手く壊れていく様子が描写できているかが不安なところですが、ここから先もどんどん皆が壊れていきますよ…!よろしければ続きも読んでいただけると嬉しいです(´∀`) (2019年9月19日 20時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
わごむごむ(プロフ) - 皆がどんどん壊れて行く感じがたまりませんなぁー (2019年9月17日 1時) (レス) id: 10a6ab8e26 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます!夢主の過去は書くうちにどんどん重くなってしまいました(^^; もっとやってもいいのですか!それなら!(違うそうじゃない)責任を押し付ける夢主は私自身書きながらくすりとしてしまいました(´ω`) (2019年7月24日 21時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 夢主ちゃんの過去が重すぎて…好きです←いいぞもっとやれ(( さりげなく責任をダニー先生に押し付ける夢主ちゃんも好きです(語彙力) (2019年7月23日 18時) (レス) id: 0ad758797f (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - キリンの妖精、キリンロングさん» コメントありがとうございます!まだまだつたない文章ですが、面白いと言って下さり嬉しいです!とても励みになります(*´∀`*)これからも楽しんでいただけるよう更新していくので、よろしくお願いします(*’ω’*) (2019年7月11日 19時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:リア | 作成日時:2019年6月16日 19時