269話 ページ43
レイはひび割れていく鏡を見つめ続けたが、それはまだ割れる様子はない。ひび割れた鏡面に、何重にも上下になって重なる自分の影。その姿を見れば見るほど、何故か心がざわついた。レイは心の波紋に目を瞑り、衝動にまかせて鏡からナイフを勢いよく抜き去ると、再びその中心に向かってナイフを振り落とす。
刹那、鏡は生気を失ったかのようにバリン、と音を立てると破片となって崩れ落ちた。レイが思わず後ずさると、崩れ落ちた鏡面の向こうに通路が続いているのが見えた。
レイはしばらく呆然としていたが、手の中に握ったままだったナイフをふと見てみると、その刃にひびが入っていた。レイは僅かに戦慄する。そのナイフのひび割れは、先ほど鏡にはいったひびにも似ている。
レイはナイフを鞄の中にしまう。こんなふうになってしまったナイフを見るのがなんだか少し怖かった。それに比べれば、奥の通路に進むのも怖くない気がする。レイは小さく息を吸う。意を決して、鏡の奥の通路に足を踏み入れる。その暗闇の先からは、重く響くオルガンの音が、レイを圧倒するように鳴り続けていた。
＊
たどり着いたその先は、最初にグレイと出会った教会だった。ステンドグラスからさしこむ光が照らすオルガンは、誰も奏者がいないにも関わらず独りでに音楽を奏で続けている。不気味にきこえる音楽を聞き流しながらレイは立ちすくんだ。
(このフロアはおかしい────)
先ほどこの教会に来た時とは全く道順が違うのに、またここへ辿り着いてしまった。そしてここも、むせ返るほどの甘いにおいに包まれている。目眩。吐き気。なんだかとても、気分が悪い。レイは思わず座り込んだ。
その時、不意にオルガンの音が遠のくと、レイの耳の中で何者かの声が響いた。
『誓いをしたとして、その誓いを神が選ぶか君にはわかるのかね。もし神の御心が違った時、君はどうする？』
この声は確かあの神父────グレイのもの。
『神なんざ────この世にいねぇんだよ』
これはザックの声。ザックの声でそんなことを言わないで。レイは聞きたくない言葉から逃げるように耳を塞いだ。
「嫌だ！ やめて！ ザックに殺されたい……ザックを死なせたくない……」
心の底から願っていることが脳内で溢れ出して、いつしか口からこぼれ出していた。
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リア(プロフ) - わごむごむさん» コメントありがとうございます！まだまだ未熟なので上手く壊れていく様子が描写できているかが不安なところですが、ここから先もどんどん皆が壊れていきますよ…！よろしければ続きも読んでいただけると嬉しいです(´∀`) (2019年9月19日 20時) (
レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
わごむごむ(プロフ) - 皆がどんどん壊れて行く感じがたまりませんなぁー (2019年9月17日 1時) (レス) id: 10a6ab8e26 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます！夢主の過去は書くうちにどんどん重くなってしまいました(^^; もっとやってもいいのですか！それなら！(違うそうじゃない)責任を押し付ける夢主は私自身書きながらくすりとしてしまいました(´ω｀) (2019年7月24日 21時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 夢主ちゃんの過去が重すぎて…好きです←いいぞもっとやれ(( さりげなく責任をダニー先生に押し付ける夢主ちゃんも好きです(語彙力) (2019年7月23日 18時) (レス) id: 0ad758797f (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - キリンの妖精、キリンロングさん» コメントありがとうございます！まだまだつたない文章ですが、面白いと言って下さり嬉しいです！とても励みになります(*´∀｀*)これからも楽しんでいただけるよう更新していくので、よろしくお願いします(*’ω’*) (2019年7月11日 19時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リア | 作成日時：2019年6月16日 19時
