256話 ページ30
*
ザックが次の部屋へと続く扉を開ける。三人の目の前には、今までの聖堂とは雰囲気の違う、殺風景な廊下が続いていた。薄暗く、長い長い廊下には、点々と鮮やかな血の跡が残っている。まるで順序を示すかのようなその跡。
「これ、ダニー先生のかな……?」
「多分、ね。あの人、血まみれだったから」
ダニーのことを考えただけで不快感が募る。隠しきれない苛立ちが声の表面に現れてしまった。Aの様子がおかしいことにレイは少し気づいているようだが、気を使ってか口をあまり開こうとはしない。そのせいか、三人の間には今までにない気まずい空気が流れている。血の跡を追いながら、進んでいると、レイが控えめに口を開いた。
「……ねぇ、ザック」
「あ、どうした?」
「ザックは……そのナイフがあった部屋で過ごしていたの……?」
レイの声が長い廊下に響く。気まずそうな響きが廊下の先の暗闇に消えていった。
「……そーだけどよ、それがどーしたんだよ」
「……なんとなく、気になって」
「……あ?」
「さっきの話もそうだけど……私、ザックのことを何も知らない。だから……なんでだろう……、なんとなく、気になったの……」
動揺したようなレイの言葉は途切れ途切れになる。まとまらない言葉をボソボソと吐き出して、レイはザックから目を背けてしまった。
「なんだよそれ、意味わかんねぇ」
ザックはフードの上から後ろ髪をかく。
「あの、でも……あの部屋、もう少し掃除してもいいと思う」
レイが不器用にそんなことを言うと、ザックは一気に頭に血が上ったようで、勢いよくレイを振り返る。
「うっせぇな! もう戻らねぇんだから、関係ねーだろうが!」
「うん……」
後悔したようにレイはうつむく。そんなことを言いたかった訳では無いと、そんな目線を泳がせながら、口を閉ざす。しかし、僅かな沈黙の後にレイは再び口を開いた。
「……ザックは、さっき自分のことを化け物と言ったけど、それは、人間じゃないってこと?」
ザックは一瞬、呆れたように息をついた。レイの質問の真意はザックには届いていないらしいが、Aはその質問の本当の意図を感じ取っていた。ザックが自らを化け物と称した本当の意図を知りたい、という口に出さない思い。
324人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リア(プロフ) - わごむごむさん» コメントありがとうございます!まだまだ未熟なので上手く壊れていく様子が描写できているかが不安なところですが、ここから先もどんどん皆が壊れていきますよ…!よろしければ続きも読んでいただけると嬉しいです(´∀`) (2019年9月19日 20時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
わごむごむ(プロフ) - 皆がどんどん壊れて行く感じがたまりませんなぁー (2019年9月17日 1時) (レス) id: 10a6ab8e26 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます!夢主の過去は書くうちにどんどん重くなってしまいました(^^; もっとやってもいいのですか!それなら!(違うそうじゃない)責任を押し付ける夢主は私自身書きながらくすりとしてしまいました(´ω`) (2019年7月24日 21時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 夢主ちゃんの過去が重すぎて…好きです←いいぞもっとやれ(( さりげなく責任をダニー先生に押し付ける夢主ちゃんも好きです(語彙力) (2019年7月23日 18時) (レス) id: 0ad758797f (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - キリンの妖精、キリンロングさん» コメントありがとうございます!まだまだつたない文章ですが、面白いと言って下さり嬉しいです!とても励みになります(*´∀`*)これからも楽しんでいただけるよう更新していくので、よろしくお願いします(*’ω’*) (2019年7月11日 19時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:リア | 作成日時:2019年6月16日 19時