251話 ページ25
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歩みは、遅かった。ザックはカマに体を預けて、よろよろと足を進める。いや、進めているとも言えないほど、ザックの足取りはおぼつかなかった。
そして、Aの方は、そんなザックから数歩離れた所を、うつむいたまま歩いていた。
そんな時だった。Aたちの背後からバンッ、という音が響く。Aが振り返ると、それはドアが勢いよく開けられた音らしい。そして、開け放たれたドアから飛び込んできたのはレイだった。
(レイ……!?)
Aが思わず怯んで立ちすくむと、一目散に駆け寄ってきたレイはAの手首を掴んで、切羽詰まった声で叫んだ。
「ねぇ、A……! 大きな蛇がいるの、逃げよう!」
Aの手首を掴んだそのままレイは走り出す。そしてザックの元に駆け寄ると、今にも倒れそうなその体を支え、なおも走り出そうとする。
(……大きな、蛇……?)
Aはレイの背後を眺めるが、そこにはなにもない。と、その時に、Aははっとして自分の手首を見下ろした。
未だ、握られたままの手首。そこが、焼けるように熱い。何かに必死になっているレイの手の熱と、自身の体が放つ熱に手首を焼かれていく。
(……!!)
Aが思わずレイの手を振り払うと、レイは目を見開いてAを見上げた。
「A……? どうして? 早く逃げないと」
Aは困惑する。レイのあまりにも迫真のそれは、演技とも思えない。レイは何を見ているのだろう。何を見せられているのだろう。レイが怯えて見ているその方向にはなにもない。ただ、虚空。
と、ザックがイラついたようにレイの肩を掴んで、強引に自分の方を向かせた。
「おい」
ザックの声は不機嫌で、イラついているのがよく分かる。レイはザックに肩を掴まれても、依然として「はやく、後ろの扉から逃げなきゃ!」などと叫び続けている。
「あぁ、うっせぇ!」
ザックはレイの手を力強く振りほどく。そして、レイの頭にチョップを食らわせた。
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リア(プロフ) - わごむごむさん» コメントありがとうございます!まだまだ未熟なので上手く壊れていく様子が描写できているかが不安なところですが、ここから先もどんどん皆が壊れていきますよ…!よろしければ続きも読んでいただけると嬉しいです(´∀`) (2019年9月19日 20時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
わごむごむ(プロフ) - 皆がどんどん壊れて行く感じがたまりませんなぁー (2019年9月17日 1時) (レス) id: 10a6ab8e26 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます!夢主の過去は書くうちにどんどん重くなってしまいました(^^; もっとやってもいいのですか!それなら!(違うそうじゃない)責任を押し付ける夢主は私自身書きながらくすりとしてしまいました(´ω`) (2019年7月24日 21時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 夢主ちゃんの過去が重すぎて…好きです←いいぞもっとやれ(( さりげなく責任をダニー先生に押し付ける夢主ちゃんも好きです(語彙力) (2019年7月23日 18時) (レス) id: 0ad758797f (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - キリンの妖精、キリンロングさん» コメントありがとうございます!まだまだつたない文章ですが、面白いと言って下さり嬉しいです!とても励みになります(*´∀`*)これからも楽しんでいただけるよう更新していくので、よろしくお願いします(*’ω’*) (2019年7月11日 19時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2019年6月16日 19時