246話 ページ20
部屋の中に入る。
そこは狭くも広くもないが、びっくりするほど散らかっている部屋だった。床には埃が積もり、湿気た菓子が散乱し、着色料で色付けされているのであろう、体に悪そうな色のシリアルが散らばって、炭酸飲料の空き缶が何本も転がされていた。
(汚い……)
レイは反射的にそう思った。レイが使っていた部屋は、いつだって整理されていた。
(お父さんと、お母さんが喧嘩した後みたい……でも、それよりももっと汚いかもしれない)
ここが誰かの部屋だとすれば、まともに生活できる環境とは思えない。しかし、確かに誰かがここで生活していたことを感じさせる気配が漂っている。
と、レイはカビの生えた洗面台を視界の隅に捕え、そちらを振り向いた。そしてその下に使用済みの包帯を見つける。
(包帯……)
レイはそれをそっと手に取ると、部屋を見渡した。
(もしかして、ここはザックが生活していた部屋……? だとしたら、ザックに頼まれたものが、あるかもしれない……)
胸が高鳴りだす。急いでザックに頼まれたものを見つけ出して、B2に帰らなければ。焦燥感に駆られながら、レイは部屋の中を探り出した。
部屋の奥に設置されていた傷んだソファとローテーブルを眺めて、レイはローテーブルの上に置かれていた、淵の割れたコップを手に取る。中には、空き缶の中身であろう茶色の飲み物が入っていた。炭酸はすっかり抜けている。
その隣には、同じように欠けたガラス製の器があり、中には茶色い炭酸飲料で溶けたシリアルが入っていた。
(不味そうだな……)
この部屋にあるものは、何もかもが体に悪そうだった。食べ物も、飲み物も、体にいいとは思えないし、部屋も汚くて環境は最悪だ。
そんなことを考えながら、レイはソファの上でグシャグシャに丸められて捨てられていた毛布を手に取った。
(薄い……これだけじゃ、きっと寒い……それとも、ザックは寒さには慣れているのかな)
ソファに腰を下ろしてみると、レイは驚いて立ち上がってしまった。ソファは驚くほど硬くて、レイの家にあったふかふかの感触とは程遠いものだった。まるで、板の上に勢いよく尻もちを着いた時みたいだ。
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リア(プロフ) - わごむごむさん» コメントありがとうございます!まだまだ未熟なので上手く壊れていく様子が描写できているかが不安なところですが、ここから先もどんどん皆が壊れていきますよ…!よろしければ続きも読んでいただけると嬉しいです(´∀`) (2019年9月19日 20時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
わごむごむ(プロフ) - 皆がどんどん壊れて行く感じがたまりませんなぁー (2019年9月17日 1時) (レス) id: 10a6ab8e26 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます!夢主の過去は書くうちにどんどん重くなってしまいました(^^; もっとやってもいいのですか!それなら!(違うそうじゃない)責任を押し付ける夢主は私自身書きながらくすりとしてしまいました(´ω`) (2019年7月24日 21時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 夢主ちゃんの過去が重すぎて…好きです←いいぞもっとやれ(( さりげなく責任をダニー先生に押し付ける夢主ちゃんも好きです(語彙力) (2019年7月23日 18時) (レス) id: 0ad758797f (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - キリンの妖精、キリンロングさん» コメントありがとうございます!まだまだつたない文章ですが、面白いと言って下さり嬉しいです!とても励みになります(*´∀`*)これからも楽しんでいただけるよう更新していくので、よろしくお願いします(*’ω’*) (2019年7月11日 19時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2019年6月16日 19時