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243話 ページ17

それから、しばらくの時がたった。



「……おい、A」



 荒く呼吸を繰り返し、手のひらを切り裂いた痛みに顔を歪めながら、自分の膝を抱えんでいたAは、唐突に名を呼ばれ、顔を上げた。


 壁にもたれたまま意識を失っていたザックが、僅かに体を起こしてこちらを見ていた。



「あぁ……ザック。体は、どう?」



 Aは無理に笑みを顔に貼り付けて、ザックにきく。しかしザックは、Aのおかしな様子にすぐに気がついた。



「……おい、A。お前、その手の傷はどうした。……あと、なんだこれ。薬か?」



 ザックはAが切り裂いた手の傷について聞いたあと、ダニーが置いていった、たった一つの薬を手に取った。



「……うん。薬だよ。それ使って、ザック」


「……どうやって使えばいいんだよ」



 ザックの問いに対して、ここでの最適の答えは『Aが処置する』ことなのだろうが、今のAは、できるだけザックに近づかないようにしたかった。また、さっきみたいに、ザックを殺そうとしてしまったら、どうしよう。そんな不安が、Aの顔をうつむかせる。



「……ごめん。わたしじゃ、処置できない」


「……じゃあこんなもんあっても仕方ねぇじゃねぇか。レイが戻ってくるのを待つしかねぇな……」



 ザックは気だるげにそう言ったあと、もう一度Aに目を向けた。



「それで、その傷はなんだ」



 Aはそれをもう一度聞かれて、思わずザックから顔をそむけた。ザックに失望されるのが怖くて、嫌われるのが怖くて、さっきのことは言い出せない。



「おい、黙ってないでなんか言え。何があった」


「……ダニー先生が、生きてた」



 Aはさりげなくダニーに全ての責任を押し付けて、そう答えた。この言い方だと、ザックはこの手の傷が、ダニーによるものだと理解するだろう。実際、そうだった。

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リア(プロフ) - わごむごむさん» コメントありがとうございます!まだまだ未熟なので上手く壊れていく様子が描写できているかが不安なところですが、ここから先もどんどん皆が壊れていきますよ…!よろしければ続きも読んでいただけると嬉しいです(´∀`) (2019年9月19日 20時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
わごむごむ(プロフ) - 皆がどんどん壊れて行く感じがたまりませんなぁー (2019年9月17日 1時) (レス) id: 10a6ab8e26 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます!夢主の過去は書くうちにどんどん重くなってしまいました(^^; もっとやってもいいのですか!それなら!(違うそうじゃない)責任を押し付ける夢主は私自身書きながらくすりとしてしまいました(´ω`) (2019年7月24日 21時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 夢主ちゃんの過去が重すぎて…好きです←いいぞもっとやれ(( さりげなく責任をダニー先生に押し付ける夢主ちゃんも好きです(語彙力) (2019年7月23日 18時) (レス) id: 0ad758797f (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - キリンの妖精、キリンロングさん» コメントありがとうございます!まだまだつたない文章ですが、面白いと言って下さり嬉しいです!とても励みになります(*´∀`*)これからも楽しんでいただけるよう更新していくので、よろしくお願いします(*’ω’*) (2019年7月11日 19時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リア | 作成日時:2019年6月16日 19時

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