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241話 ページ15





「あ……あぁ……!」



 Aは頭をかかえるとよろよろと後ずさった。


 過去の回想から帰ってきて、目の前の景色はB2のものになっている。しかし今、Aにはそれが同じ景色には見えなかった。


 忘れていた過去、忘れたかった過去。取り戻した記憶、取り戻してしまった記憶。それらが、Aを絶望に突き落とす。




 暗闇が、苦手だったのは。───暗闇の中に閉じ込められ、死にかけた記憶が焼き付いていたから。


 凶器を、いくつも持っていたのは。───わたしが、それらの凶器を扱う殺人鬼だったから。


 身体能力が、高かったのは。───何人もの人を追い詰めて、殺してきたから。




(あぁ─── )




 ───なんて、絶望的。




 記憶を取り戻した今、Aの中には耐え難い殺人衝動が渦巻いている。それでもAは確かに理性を保っていた。不気味な笑みを顔に浮かべたダニーを睨みつけると、Aは息も絶え絶えに口を開く。



「……はや、く。薬、渡して」


「ふふ。今の君にとって、一番大切なのは薬じゃないだろう?」



 ダニーが薄く笑う。



「ほら、ポシェットの中身を見てご覧? 役に立つと思うよ?」



 Aはゆっくりとポシェットの中に手を入れた。その中に何が入っているのかなんて自分でもよく分かっている。それでも、手が止められない。もはや自分の意志なのかどうかすらも分からなかった。


 そして、手がポシェットの中身の、ヒヤリと冷たいそれに触れた時。



 ────理性の糸が引きちぎれた。



「………ッ!」



 ポシェットの中身、その一つのナイフを手に握る。ぼんやりとしていながら、覚醒した脳が、狂気に塗りつぶされていく。


 目の前で、血を流して壁にもたれたまま、動かない男がいた。


 ザックだ。


 誰でもいい。耐えられない。


 殺したい。殺さなければ!




 いつの間にやら、ダニーは薬をその場に一つだけ置いて姿を消していた。


 もし、Aが正気ならば。薬が一つしかないことに対して、憤慨しただろうか。しかし今のAにとって、そんなことはどうでもよかった。


 ただ、愉快だった。目の前の男を、殺すことができるのが。簡単だ。今、ザックは動けないのだから。


 本能のままにナイフを振り上げる。真っ直ぐ振り下ろせば、ザックは死ぬだろう。


 心臓が高鳴る。気持ちが昂って、呼吸が荒くなる。しっかりと狙いを定めて、ナイフを振り下ろした。

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リア(プロフ) - わごむごむさん» コメントありがとうございます!まだまだ未熟なので上手く壊れていく様子が描写できているかが不安なところですが、ここから先もどんどん皆が壊れていきますよ…!よろしければ続きも読んでいただけると嬉しいです(´∀`) (2019年9月19日 20時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
わごむごむ(プロフ) - 皆がどんどん壊れて行く感じがたまりませんなぁー (2019年9月17日 1時) (レス) id: 10a6ab8e26 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます!夢主の過去は書くうちにどんどん重くなってしまいました(^^; もっとやってもいいのですか!それなら!(違うそうじゃない)責任を押し付ける夢主は私自身書きながらくすりとしてしまいました(´ω`) (2019年7月24日 21時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ - 夢主ちゃんの過去が重すぎて…好きです←いいぞもっとやれ(( さりげなく責任をダニー先生に押し付ける夢主ちゃんも好きです(語彙力) (2019年7月23日 18時) (レス) id: 0ad758797f (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - キリンの妖精、キリンロングさん» コメントありがとうございます!まだまだつたない文章ですが、面白いと言って下さり嬉しいです!とても励みになります(*´∀`*)これからも楽しんでいただけるよう更新していくので、よろしくお願いします(*’ω’*) (2019年7月11日 19時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:リア | 作成日時:2019年6月16日 19時

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