100話 ページ10
次の部屋に進むと、途端に腐敗臭が鼻をついた。Aは思わず口元を覆う。
(このにおいは……)
ここに来るまでに何度も嗅がされた、人間の死体の臭いだ。そして臭いがする方からは、地響きのような、低い唸り声が聞こえてくる。
────うぉぉ……。
スピーカーからキャシーの声が流れ出した。
《ねぇ、せっかくここを通るんだから、もう一度聞いてあげるわ。牢獄で一生過ごすのはどう？》
どうやら、ここは牢獄らしい。先程から聞こえてくるこの声は、飼い殺しを選んでしまった、死を待つばかりの罪人たちの声なのだろう。
どこか助けを求めるような、それらの唸り声を簡単にかき消して、場に合わない明るい声でキャシーは三人に提案する。
「……だから、入らねぇって言ってんだろうが……しつこいんだよ」
ザックがもはや呆れたような声でそういう。
《あら、つれない。私を楽しませてくれる道具にはなってくれないのね？》
「……あぁ？道具だ？」
ザックは顔を歪めた。それを嘲笑うかのような、キャシーの笑い声。
《道具って言うのはね、あなた達のことを言ってるのよ？だって、あなた達見てると、ほんとおかしいだもの！ ────レイと、ザック。ずいぶん変な、約束事をしているのね？》
キャシーはくすくすと笑いながら、楽しそうな声で話し続ける。
《危うくって、お互いの身勝手を押し付けただけの約束。利害は一致しているように見えるけど、お互いが道具に過ぎない……でも、本当の道具はどっちなのかしら？》
「あ？どういう意味だ？」
《あらやだ、わからない？でもいいわ、だからこそ罪人なのよね。それでは引き続き、刑罰をお楽しみくださぁい♪》
放送は切れてしまった。再び、低い呻き声がフロアに響きだす。
「……道具か。……あぁ、ムカムカしてきやがった」
ザックが低い声で呟く。その声は冷静そうに聞こえて、静かな怒りに満ちている。
「……ザック？」
レイが心配そうにザックの名を呼ぶ。
「……今、あんま話しかけてくんな。いくぞ」
ザックは名を呼ばれて、少しレイの方を見たが、すぐにふいっと目を背ける。突き放すような口調に、レイは戸惑ったように、小さく「……うん」と言った。
ザックは無性に苛立っているように見えた。しかし、苛立っているのはAも同じだった。
(道具……か……)
道具、と呼ばれたことがやけに癇に障る。気分が悪かった。
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鬼灯黒狐(プロフ) - 更新私の方が遅いので大丈夫ですよ(;´д｀)w (2018年10月4日 21時) (
レス) id: 28c4276209 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 鬼灯黒狐さん» ありがとうございます！最近更新速度がおちてしまっていて申し訳ないです(>_<;)これからもがんばりますので見てやってくださいm(*_ _)m (2018年10月2日 7時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
鬼灯黒狐(プロフ) - ザック最高...更新頑張ってください！ (2018年9月30日 20時) (レス) id: 28c4276209 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リア | 作成日時：2018年9月8日 19時
