133話 ページ43
「……ッ」
その時、ザックの顔が苦しげに歪んで、そのまぶたをそっと開いた。
「ザック……！」
Aとレイは同時に叫ぶ。ほんの僅かな仕草でも、ザックがまだ生きていて、動いていることに、おもわず声を張ってしまった。
「……あ？ ついたのか……？」
ザックが視線だけを動かしながら、辺りを見渡して、声を漏らす。
その声は消えていまいそうなほど掠れていて、Aは呼吸するのも忘れて耳をすましていた。
「そうだよ、ザック。B2に、ついたよ……でも……」
Aが言い聞かせるようにこたえると、ザックは重く息をつくと、壁に身体を預けて、立ち上がろうとする。
「B2か……おい、じゃあ行くぞ」
「ダメ！ まだ血もとまってない！」
ザックをレイが慌てて止める。この傷でフロアを探索するなど、あまりにも無謀すぎる。
「血ィ……？ あー……こんなもん、どうってことねぇよ」
ザックは傷口を確認もしないで、言い放つ。
「どうってことないわけないよ……！ あんな大きなカマで切りつけて……傷だって閉じてない。ザックが、死んじゃう……！」
Aが声を荒らげると、ザックは不機嫌そうにAを睨みつける。
「だから、大丈夫って言ってんだろうが……」
ザックは懲りもせず言い返してくるが、その声はか細い。いつもの威勢など微塵も残っておらず、明らかに弱っている。
「……なんだ、お前ら」
ザックが、ぼんやりとした顔をして視界を揺らす。虚ろな目をして、Aとレイの顔を順番に見て、ザックは怪訝な顔をした。
「なに、……変な顔、してんだ……」
「……変な、顔？」
レイがそう聞き返す。しかし、ザックからの返答はない。
はっとしてザックの顔を覗き込むと、再びザックはうつむいて、意識を失っていた。
「ザック……！」
Aが怖々とザックの顔に自分の顔を近づけると、ほんの微かに、呼吸しているのが分かった。
(生きてる、でもこのままじゃ……)
のんびりしている時間はない。この状況をどうにかしなければ、ザックは死んでしまう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 218人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
鬼灯黒狐(プロフ) - 更新私の方が遅いので大丈夫ですよ(;´д｀)w (2018年10月4日 21時) (
レス) id: 28c4276209 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 鬼灯黒狐さん» ありがとうございます！最近更新速度がおちてしまっていて申し訳ないです(>_<;)これからもがんばりますので見てやってくださいm(*_ _)m (2018年10月2日 7時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
鬼灯黒狐(プロフ) - ザック最高...更新頑張ってください！ (2018年9月30日 20時) (レス) id: 28c4276209 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：リア | 作成日時：2018年9月8日 19時
