130話 ページ40
エレベーターの扉が開くと、ザックは嬉嬉としてさっそく乗り込んでいく。
レイとAがそれに続き、ボタンを押すと、エレベーターはまもなく動き出した。
Aはふぅ、と息をついた。
B3は本当に地獄のようなフロアだった。思い出して顔をしかめると、耳の中にキャシーの笑い声が木霊するようだった。それと同時に、最期の断末魔も脳内に蘇る。そのおぞましい景色は、きっとしばらくは忘れられない。
「ねぇザック。……ザックはあの時、喜んで自分のお腹を切ったの?」
静寂の中、レイが静かに口を開いた。
「あ? 俺をあの一人SM女と一緒にするんじゃねぇよ。あのままあの女看守に殺されるより、よっぽどマシだと思っただけだ」
ザックは苦い顔になりながらも、そう言った。
「そう……」
「……つーか、お前が撃ったあの銃、あの女のじゃないだろ。あれ、どうした?」
うわの空で天井の隅を見つめていたAはレイの方に振り向いた。
「レイ、わたしも……それ、気になってた。あの銃、レイの?」
「……うん。あれは、私の拳銃……」
レイは少しドキリとした顔をして、それからぽつりと言葉を落とした。
「お前、どこにそんなもん、隠し持ってたんだよ?」
「隠してたわけじゃないけど……このポシェットの中。ハンカチで包んでた……。殺人現場を見た日から、ずっと持っていたの」
レイが顔を伏せる。そのことに関しては、あまり言いたくないのだろうか。言葉を濁して、Aともザックとも目を合わせようとしない。
「……まぁ、いい。なんにせよ、あのときあいつを撃ったのは正解だったんだ。思い出しても笑っちまうくらい、最高にタイミングよかったぞ」
ザックは楽しそうに笑って、それからどこか無邪気な顔でAのポシェットを指さす。
「お前もポシェット持ってんじゃねぇか。その中に何入れてんだよ」
Aは息をつまらせる。この中に、入っているものがなにか────知られるわけにはいかない。
「内緒」
冷や汗をかきながらも、飄々とした態度でそう言ってみせる。
「女の子のポシェットの中身について口出しするのは、よくないよ?」
いたずらっぽく言うと、ザックは拗ねた顔をして、小さく舌打ちをした。しかしその舌打ちも、今までのような、イラついたものではない。
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鬼灯黒狐(プロフ) - 更新私の方が遅いので大丈夫ですよ(;´д`)w (2018年10月4日 21時) (レス) id: 28c4276209 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 鬼灯黒狐さん» ありがとうございます!最近更新速度がおちてしまっていて申し訳ないです(>_<;)これからもがんばりますので見てやってくださいm(*_ _)m (2018年10月2日 7時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
鬼灯黒狐(プロフ) - ザック最高...更新頑張ってください! (2018年9月30日 20時) (レス) id: 28c4276209 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:リア | 作成日時:2018年9月8日 19時