43話 ページ44
レイが向かったのはエレベーター前の部屋だった。そこでAはピンと来る。最初にこのフロアに来た時に、水の中にあった何か。それがレイの言う仕掛けなのかもしれない。レイは水路の中に目を凝らすと確信したようにうなずいた。
「ねえ」
レイはザックの方を振り返る。
「何だ?」
「あのね、仕掛けかどうかわからないんだけど、あそこにいって、沈んでるくぼみに立ってみて欲しい」
そう言ってレイは水路の中を指さした。
「この水の中に? 俺がかよ」
「嫌なら、別に」
「おい、俺は行かねぇとは言ってねぇよ! お前と違って、俺はここで殺されるのはまっぴらなんだよ!」
ザックは黙ったままのレイを呆れたように見て、今度はイラついたようにまくしたてる。
「なんだよ、黙りこくりやがって……とにかく、勝手に死のうとも、殺されようとも考えるな! 俺がここから出れなくなるのは困るんだよ!」
そう言うとザックはザブザブと水の中に入っていった。一度手を突っ込んだAはこの水の冷たさを知っている。
「……ザック、大丈夫? 寒くない?」
Aがそう訊くと、ザックは若干震えながら叫ぶように言った。
「あぁ!? 寒いに決まってんだろ! ……そんで、ここに乗ってればいいんだな!?」
ザックがスイッチの上に乗ると、スイッチはカチ、と音を立ててくぼんだ。
「で、レイ。仕掛けは解けそう?」
レイが深くうなずいた時、レイが何かを見つけたらしい。一枚のメモ紙を拾い上げた。
「……メモ?」
レイがその内容を読み出したその横で、Aもそっとメモをのぞき込む。
"ボクが手を貸してあげるよ"
"苦しみたければ、苦しく。楽なのがいいなら、優しく。────お好みの方法を、選んであげる"
"ねぇ、どんな殺され方をしたい?"
「これ……子供の字……?」
そう言えば、と思う。墓石のデザインや注文書は、子供の字だった。
「おい、何してんだ?」
レイとAがその場で動かないのを見て、ザックが震えた声で訊く。
「メモが落ちていたの……殺してあげる、みたいなことが書いてある」
「あ? 殺してあげるだ? ……なめてんじゃねぇよ、貸せ!」
ザックは一旦スイッチから離れて、荒っぽくメモを奪い取った。そして、そのままメモを細かく破いて、水路の中にばらまいてしまった。メモはあっという間に水が染み込んで、ぐずぐずになった。
276人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
暇人9号(プロフ) - リア.........。オリキャラと同じじゃん。 (2020年12月20日 13時) (レス) id: 2a2b2b394e (このIDを非表示/違反報告)
9Sに殺されたいロリコン - リアさん» 派手さがますのでアタシはオススメしませんけどね…… (2019年12月8日 18時) (レス) id: 23809db5c5 (このIDを非表示/違反報告)
日向クロ - 「ベースデザインを設定」で背景は変更できますよ。 (2019年5月25日 19時) (レス) id: 1e8f4916fe (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - 日向クロさん» 初めまして、コメントありがとうございます!この小説を読んで下さり、ありがとうございます。背景の色、ですか…実はあまり占ツクの使い方分かってないのです(汗)なるほど、背景の色を変えれるのですね!色々試してみますね、ありがとうございました! (2019年4月27日 9時) (レス) id: aa65f53a7e (このIDを非表示/違反報告)
日向クロ - 初めまして。とても面白いお話ですね!ところで、背景の色を変えたりはしないのですか?それやると面白さが上がると思いますよ! (2019年4月21日 18時) (レス) id: eebf1123f7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:リア | 作成日時:2018年8月4日 21時