【殺戮の天使】天使か、生贄か。

29話 ページ30

「テメェ……俺の顔に土をかけた奴だろ。さっきよりかはいい顔してやがる。今すぐぶっ殺してやる！」



　殺人鬼が急にカマを振り上げた。Aは突然向けられた殺意に思わず後ずさる。



「やめて、Aは殺さないで。私がエレベーターをどうにかするから」



　レイがそういったことで殺人鬼は顔を引きつらせて、カマをおろした。



「……あぁ？ どうせこいつも頭おかしいんだろ。こいつまで『死にたい』って言い出したら、もう吐くもん残ってねぇぞ」



　殺人鬼がAを指さす。



「……別にわたしは死にたいわけじゃない。てか、吐くのやめて」



　殺人鬼を睨み返しながらAがそう言うと、殺人鬼は頭を掻きむしる。



「俺はイラついてんだよ……！ ドアはあかねぇし生贄とやらにはされるし、こいつには土かけられるしでよぉ！」


「ドアはレイが開けてくれるってば！ 生贄になったのは……え、あなた生贄になったの？」



　レイはAに伸ばしていた手をそっと下ろした。エレベーターを開ける方法を探すのに、Aも着いてきてもらおうと思っていたが、すっかり熱くなっている。



(一人で……いこう……)



　そっとその場を離れる。少し離れた場所で振り返ると、二人がギャンギャンと言い争っているのが見えた。



(頑張って、A……私が帰ってくるまで、生きていてね)



　そっと両手を胸の前で合わせると、レイはエレベーターの扉を開けるために、元きた廊下を戻り始めた。

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