【殺戮の天使】天使か、生贄か。

1話 ページ1

 
　チリン、と。
 耳の奥で鈴の音が鳴り響いた。


 ふとレイが目を覚ますと、そこは知らない場所だった。


「……？」


 立ち上がり、辺りを見渡した。
　窓辺に歩み寄る。窓の外には怖いくらい青い月が浮かんで、異様な光を放っていた。
　まるで偽物。冷たい人工物のような、不自然な。


 瞬きをして、再び部屋を見渡した。頭の中が真っ白で、まるで記憶喪失のように靄がかかっている。───なにも思い出せない。


 ここはどこなのか。
 なぜ私はこんなところにいるのだろう。
 なんだか頭が痛い。目眩もする。


 その時、ふと思い出した。


「そうだ……私は病院に来ていた」


 なぜ病院に来ていたのかは思い出せない。────だって、私は病気なんかじゃなかった。
 それに、ここは知っている病院じゃない。自分がよく知るはずの病院を思い出そうとして、頭痛と、目眩が酷くなった。


(気持ち悪い……)


 ────ほら、レイもこっちにおいで。


 誰かの声が、頭の中で響く。これは夢で見たお母さんの声だろうか。


(……お母さんと、お父さんを探さなきゃ……)


 まだぼんやりとする意識の中、ふらふらと部屋を出た。

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