5章 一人の軍人の記憶〈３話〉 ページ39
森の中の開けた場所に張られた、幾つかのテント。立派な砲塔を装備した
一番前に立つ下士官であろう人物が、にわかに鋭い声で幾人かの名前を呼んだ。
「ピョートル・ヤーコフ。
ビロード・エーリコ。
レフ・フマロフ。
カリンカ・ロムヴィチ。」
下士官の点呼に、呼ばれた兵はまだ幼さが残る緊張感のある声で精一杯の返事をした。
その中の一人に、最後に呼ばれた一人に、ティーは見覚えがあった。
先程の教室で泣く少女に寄り添っていた金髪緑眼の少女である。少し背が伸びたがやつれている様に見える。前線での激戦が続いているのかもしれない。
「今呼ばれた者は全員上等兵に昇級する。」
その言葉に18人の新兵たちがざわついた。まだまともに戦えもしない、小銃の整備も満足にできないような三等兵や二等兵である。それが、何を意図して飛び級など。
まるで戦死したみたいじゃないか。
「同時に！」
下士官が声を上げてざわめきを鎮めた。
「4人には『ギア』に就任する。ギアは体内に歯車を埋め込むことでそれが半永久的に生命維持活動をする。4名は後で指令天幕に来い。」
「はいっ」
カリンカ達は不安と安心、そして誇りを湛えて返事をした。
ティーは考えた。金髪緑眼、下士官が着ている深緑色の軍服。そしてギアになることを宣告されたカリンカ・ロムヴィチ。
これはあの『暴発者』の記憶なのだ。カリンカは嬉しそうだった。もう死なない。最後まで祖国を守ることができる。そんな期待に胸を膨らませる姿は、出来るようになったことを自慢しに行く子供の様に無垢で、ティーの心を深くえぐった。
カリンカは天幕の前に来ると、
「カリンカ・ロムヴィチ二等兵であります。」
と一言、「入れ」と許可が下りて中に入ると、下士官と女軍医に敬礼した。
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弧瑠十 奏(プロフ) - 00さん» コメントありがとうございます！そう言っていただけると頑張れます。これからも是非ともよろしくお願いいたします！ (2022年6月4日 18時) (
レス) id: 886c7552f3 (このIDを非表示/違反報告)
00 - コメント失礼します。とても面白かったです！本当にお話を書くのがお上手ですね。パート2も楽しみにしています!! (2022年6月4日 11時) (レス) @page46 id: 4683564af1 (このIDを非表示/違反報告)
弧瑠十 奏(プロフ) - 更新かなり遅くなりました。申し訳ございません。 (2021年11月30日 6時) (レス) id: 886c7552f3 (このIDを非表示/違反報告)
はちみつあめ(プロフ) - 検定頑張ってください (2020年10月26日 8時) (レス) id: f82d3976b3 (このIDを非表示/違反報告)
ソウ(プロフ) - 白夜の世界さん» 有り難う御座います！とても嬉しい御言葉です。これからも、頑張ります。 (2020年6月9日 16時) (レス) id: a9c96849d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：弧瑠十 奏 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aaaD
作成日時：2020年2月25日 21時
