月島蛍が。 ページ6
『名前を間違える』
佐藤「ねーねー蛍ー!」
月島「なにあき…」
あき、という聞き慣れない名前に私は眉をひそめてしまう。元カノとか、かな。4月に出会ったばかりの私たちは付き合いが浅く、恋人ではあるもののお互いのことをまだ良く知らない。それも元カノのことなんて全く。
蛍は焦ったような恥ずかしがっているような顔でこちらをチラチラとうかがってきている。必死に隠そうと訂正しようと焦っているような感じではなく、ただただ恥ずかしがっているような顔だった。
そんな表情に違和感をおぼえなかったわけではないが、どうせ元カノとの甘々エピソードでも思い出して顔を赤く染めているだけだろうと勝手に決めつけ、心を落ち着かせる。
月島「…いや、これは…ごめん。」
蛍がこう謝ったことによって、元カノであることがほぼ確定となっただろう。他のただの友達の名前と間違えたりしただけではこんなふうにならないだろう。
佐藤「あき、って?元カノの名前?」
心のもやもやが少しも消えないため、きちんと確認する。そしたら許してやろう。
月島「…は?僕、君が初めての彼女だけど。」
先ほどの顔の赤らみはどこへ消えたのやら、すっかりいつも通りの落ち着いた顔でそう言ってくる。
佐藤「え?どーゆーこと、あきって。」
月島「…あー、明光って言いかけただけ。兄ちゃ…兄、なんだけど、その、家族以外に蛍ってあんまり呼ばれないから、さ。」
ふいっと顔を背ける蛍。その姿を私はさっきまでもやもやしていたのに、不思議と口角が上がってしまった。
お兄ちゃん…なら、許せるかな。
end
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作者名:桜乃 ぽる | 作成日時:2017年6月26日 22時