【実l況l者】好きを更新し続けよう【短編集】 (ページ8)

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期間限定の隣じゃ足りなくなる _ky ページ8

「んー？Aのマネ」

あー、だめだ、わかった。なんとなく近い距離、それなのに不愉快にならない詰め方、なんなんだと思ってたけどこいつめちゃめちゃ人たらしだ。わかっててやってるのか、天然なのかわからないけど、好かれ方を知ってる。

人たらしというか、わたしたらし。まあモテるだろうし男友達も多いわけだから人たらしであってるけど。

「こっち見てよ」

そんなセリフを言われたら嫌でも見てしまう。視線を横にずらすと、こっちをじっと見つめるキヨくんがいて。イケメンって言ってた子いたけど、本当に整った顔してる、不思議。

「…そんな熱心に見られると気になるわ」

わたしがまたじっと見つめすぎると、彼はそう言いながら前を向く。ほら、そういうとこ。期待するんだって女の子は。前を見る彼の耳がよく見える、赤く染まる耳に期待するのは仕方ないだろう。そう仕掛けてきたのはあっちだし。

「てか、俺のこと好きなの？」

肯定するのはもちろん、そんなわけないでしょ、って否定するのもなんだか違う気がして、というか咄嗟に他の言葉が思いつかなくて。

「ばか」

そう発すると彼は楽しそうに笑った。

「そっちこそそんなに見てきて、わたしのこと好きなんじゃない？」

得意げに言い返してみる。返事がなかなか聞こえないのでちょっと焦って彼の顔を覗き込むと、さっきの耳の赤さとは比べ物にならないくらい真っ赤になっていて。

…だから、そういうことされると、期待するんだってば。

『期間限定の隣じゃ足りなくなる』end