【実l況l者】好きを更新し続けよう【短編集】 (ページ6)

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酔わせてください _us ページ6

「そんなに好きだった？」

すると、こくんと頷く彼女。別れた彼氏のことを好きだと認めるのって普通嫌じゃん。なんとなく強がって別に好きじゃなかったとか、今思うとなんで付き合ってたんだろうって感じとか言っちゃいがちなのに、こんなに素直に言われたらちょっと凹む。

…いやいや、凹むってなんだよ、俺。関係ないだろ、ただ飲み屋でたまたま悲しそうな子がいて、その子が可愛かったから話しかけてみただけだろ。

「好きでした」

追い打ちをかけられて、酒を1口飲む。好きでした、なんてわざわざ言われたら…、いや、好きだったのは事実か。付き合ってたんだし、今も好きかは分からないじゃないか。好きだった、だけだろ。何とか自分の都合の良い方へと考えを導く。

「Aちゃんは、彼のこと今も好きなの？」

名前なんて呼んでみたりして。…俺がこんなにがっついてるのも、酒が入ってるからだ。誰に対してなのかわからない言い訳をいくつか頭に浮かべてみても、彼女のことをいいな、と思う大きさには勝てなかった。

「…さっきまでは結構好きだったけど今は、そうじゃないかも」

その言葉に少し期待を抱く。その言葉を聞いた途端、さっきまでいいなとかかわいいとかいう言葉で済んでいた気持ちがそうじゃないと顔を出し始めてしまった。

「それって俺が都合いいように解釈していいの？」

少し躊躇いがちにそう尋ねると、先程のように素直にこくん、と頷いた。お酒のせいか俺のせいか、顔は真っ赤に染まっている。

『酔わせてください』end