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手で拭うこともなく、
ぱたぱたと落とされる涙。
差し出されたハンカチを
ジョングクくんは受け取らない。
通り過ぎた車のライトに照らされる中、
Aは、かける言葉を見つけられないまま目が合う。
こんな風に男の人が泣く姿を目の当たりにしたのは
初めてだった。
黙ったままハンカチを出した手を戻すAに
ジョングクくんは、はっと軽く息を吐く。
「ここにいるのが、しんどかった。」
声は全く揺れていない。
その瞳には大粒の涙が
まるで嘘みたいにゆらゆらと光っているのに。
「ーー ミモザのこと？」
しんどい、
そういう風には見えなかった。
店で働く彼はなんだか爛々としていたから。
「このみせも、まちも、にほんも。
しんせつにされるたび、つらかった。 」
なんでそんなことを言うのかって
Aは、なんで、と喉まで上がってきた言葉をぐっと堪えた。
手にしたハンカチを持つ手に力が入る。
「たいせつにされるたび、つらかった。
にほんも、このみせも、どうでもよかった。
ただ、こわせればよかったのに、」
さっきジョングクくんにケーキを渡したとき、
その瞳がロウソクと一緒に揺れたのをAは知っていた。
壊すとはテヒョンくんと私のこと、だろうか。
そう考えてからAは真っ直ぐジョングクくんを見据えた。
「…明日、帰国しちゃうんだよね。」
返事は返って来ない。
「これが最後じゃないよね。
また、いつだって来られるよね？日本にも、…ここにも。」
外から漏れる青い光が、艶のある黒髪を染める。
「テヒョニヒョンがいたからきたんです。
もうきませんよ。」
「きっと来るよ。」
「きません。」
「じゃあなんで、」
きっとジョングクくんしか分からない感情がある。
売り言葉に買い言葉、聞いてしまいそうになって、止めた。
ー なんで泣いてるの？ー
以前ジョングクくんから放たれた台詞。
涙の理由を聞かれても答えられなかった。
勝手に、あふれてきたから。
「…オーナーも、みさとさんも、…栗野さんも皆またきっと会えるって思ってるよ。」
ジョングクくんは返事の代わりに
ふるっと首を横に振った。
いつも強くてぶれないこの人が無防備に涙を落とし続けるから
Aは鼻の奥が痛くなる。
「私も…サヨナラは言わないよ。
だから、ジョングクくん
また、どこかで。
オンジェンガ タシ マンナヨ。」
"またいつか、会おうね"
翌朝、ジョングクくんは日本を去った。
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おけ(プロフ) - 一気に読みました‼︎面白いです！更新待ってます‼︎ (2022年1月17日 18時) (
レス) @page33 id: a8986157d1 (このIDを非表示/違反報告)
みたろう(プロフ) - このお話大好きで何度も読み返しています。更新楽しみに待っています。 (2021年12月19日 2時) (レス) @page33 id: a75885931d (このIDを非表示/違反報告)
みあも(プロフ) - 途中途中泣きながらここまで一気読みしました。切なすぎて苦しいです(; ;)更新楽しみに待ってます！二人が幸せになれますように！！ (2021年4月30日 7時) (レス) id: 2123f5cbc8 (このIDを非表示/違反報告)
ララ - 1からここまで、イッキ読みでした！本当に、キュンキュンするだけじゃなくて、お話そのものが綺麗で、大好きです！ラスト更新、ずっと楽しみにしています！ (2021年1月31日 11時) (レス) id: 0d04b07c3e (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - 素敵なお話にどんどん引き込まれて、1話から一気に読んでしまいました。読めば読むほど2人の未来は？！2人の幸せは？！と気付けば涙腺まで揺さぶられました。ラスト、2人の幸せを願いながら待ってます！ (2020年12月9日 6時) (レス) id: 57a24d82e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽるこ
| 作成日時：2019年8月25日 16時
