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「おじいさん、ありがとうございます、
また何処かで会えますように。カムサハムニダ。」


Aは居ても立っても居られなくなり、
老人に頭を下げてから席を立つ。



誰とも待ち合わせなどしていない。


それなのに、
今、誰かを待たせている。
そういった目が醒めた感覚に襲われる。



聖堂を出てタクシーを探し始めると
携帯が震える。



「もしもし?」


行き交う車を目で追いながら、通話ボタンを押し応える。



「A、無事に大邱に着いてんの?」



あやのが足早に歩きながらだろう、少し息を切らし気味に問いかける。



「大丈夫、ちゃんと大邱にいるよ。」



「1人よね?今から何処行こうとしてる?」



まるで見ていたかのようなタイミングの質問に
相変わらずのこの勘の良さに
Aはちょっと感心してしまう。



聖堂で出逢った不思議なおじいさんから貰った
謎の地図の場所に行こうとしてるなんて


まさか言えやしない。



「ランチでも食べようかなって、なんとなく、プラプラしてて。」


「へえ?」


明らかに不審そうな声が返される。


と向こうからオレンジ色の車体の上に"TAXI"の文字を掲げた、要はタクシーが見えて


「あ!はい!タクシー!」


Aはこれを逃すまいと言わんばかりに
ぶんぶんとオーバーリアクションで手を振る。


「ちょっと待て、タクシー乗るわけ?」


あやのの言葉はもう半分も耳に入らない。


無事に停まってくれたタクシーに乗り込み
「あやのごめん、また後で連絡する。」
言うとすぐさま携帯を切る。


Aが安堵したのは運転手が女性だったこと。
地図を見せると、親指を立ててくれた。


窓の外が次第に田舎風景に移り行く中


さっきまで1人でカフェに入ることすら躊躇していたのにな、
と自分に笑いが出てしまう。


感覚で生きてる、
とは以前あやのに言われた言葉。


まさにその通りで、自分でも自分のコントロールが効かなくなる時があって

今がそれ、なのだ。


タクシーが停まり、Aは前を見る。


砂利の道が続く先に、大きな平屋の一軒家。


その向こうに広がり続ける畑。



「ここで、まちます?」


周りには他の家も見当たらず
運転手が心配そうに日本語で尋ねる。


「大丈夫です、カムサハムニダ、
Could you give me a phone number?」


Aがゆっくりと英語で伝えると
タクシーの番号の書いたカードを渡してくれた。

「또한 필요할 경우、また、よんでください。」


.

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ミキ(プロフ) - えっ、えっ!ぽるこさん、私なんかにそんなお言葉(感涙)…冥土の土産にしますっ!6章のラスト!!大好きな感じですっ。ぽるこさんの言う、勝手に登場人物達が動いてる感覚?言葉が降りてきてるのですね!まさに神がかってる!噛み締めて読んで、余韻に浸ってます♪ (2019年8月25日 23時) (レス) id: be38181257 (このIDを非表示/違反報告)
ぽるこ(プロフ) - リオさん» まだ楽しめる、その様に受け止めて頂けましたか…涙。一体いつ終わるのかと作者すら感じている中なんだか救われました。ある意味生きもの、正にそれです。要は作者が1番楽しんでるのです。とても素敵な目の醒めるコメント、感謝します。 (2019年8月25日 16時) (レス) id: 0ba6c9eae1 (このIDを非表示/違反報告)
リオ(プロフ) - 次章もまだまだ楽しめるんですね!うれしいです!作者様の仰る事分かります。登場人物が勝手に動くというやつです。この作品読んでると脳内で勝手に映像化されますもん。ある意味生きものなのでしょうね。それぞれに心がありますし。とても素敵な作品ですね。 (2019年8月25日 9時) (レス) id: ba173bb279 (このIDを非表示/違反報告)
ぽるこ(プロフ) - ミキさん» ミキさんの綴るお話が読んでみたいと思う作者です。いつも胸に響くコメントの文面、作者には勿体無い位。温かい応援をありがとうございます。最終章でお待ちしてますね! (2019年8月25日 1時) (レス) id: 0ba6c9eae1 (このIDを非表示/違反報告)
ぽるこ(プロフ) - マミさん» 作者も、早くラストを迎えたいような迎えたくないような、そんな中亀のように進めております。温かいコメントを胸に更新頻度を上げつつ突き進みますね!ありがとうございます! (2019年8月25日 1時) (レス) id: 0ba6c9eae1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽるこ | 作成日時:2019年5月20日 19時

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