あふれてしまう、そのまえに。 (ページ4)

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はい、入ります。

さらりと茶色の髪が揺れ、首を傾げて、

ちょっと待って、そんな優しく見つめる？

というくらいに見つめられ

Aは思わずそう返そうとしたけれど、

待って、私、コーヒー飲めない。

香りは好きだけれど、どうしても、飲み込めない。

「ごめんなさい、ありがとうございます、失礼しました！」

なんだか、コーヒー飲めないとは言い難く

思いついた言葉を早口で放ち、

すぐさま走った。

小走りではなく、全力疾走。

見えない誰かにバトンを渡したくなる勢い。

駅までノンストップ。

Aはなぜこんなに走っているのか、自分が分からなくなった。

改札の中

いつもの喧騒に入ると

いつもの自分の顔で、電車を待つ。

しかし

久々に本気で走って、

心臓が可哀想なほど、

ばくばくどくどく。

悲鳴をあげる。

あの人

あの綺麗な人、多分、日本人では無いよね。

ゆっくり、

丁寧に、

少しずつ、

自分で確認するように話していた。

走り去る瞬間

何か言おうとしていた…気がする。

聞いてあげたらよかったのに。

ああ、私、絶対絶対、

変な人…。

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