あふれてしまう、そのまえに。 (ページ26)

今日:3 hit、昨日:26 hit、合計:634,783 hit

つかまえてもいい？ページ26

.
Aは物心ついたときから、

綺麗なもの、

手の込んだもの、

そういったものを愛していた。

綺麗だな、と思ったら、

例えば

それが道端に転がって
アリが群がるコンペイトウでも

瑞々しいキュウリの断面でも

飽きずに1時間は見ていられた。

一度、
あれはAが小学生になったばかりの頃だったか。

家族で行った遊園地で

知らない女の子が、
真っ白なワンピースに、カラフルなアイスを

べちゃべちゃに落としてしまったとき、

泣きやまないその子に、

ーほら、みて。ワンピースがゆめみたいないろになってる。いいなぁ。ー

と話しかけ、

母に、こらっ、と止められたことがあった。

母の制止よりも、

泣いていた女の子の、自分を見る、
変な子、という顔が
悲しかったのを覚えている。

私、変な子なのかな。

時間の使い方が下手だと色んな人から言われてきたし
夢中になると見事に周りが見えなくなる。

父からは

もっと要領良く生きなさいと

心配されていた。

自分が愛されているから心配されているのが

子どもながらに分かっていたので

あまり心配かけまい、と

なるべく普通に。

綺麗なものにはあまり深入りしないで、生きてきた。

心の深いところに響くものを
なるべく見ないように、触れないように

変な目で見られないように
普通に、普通に。

そうやって特に問題なく思春期が過ぎ、

反抗期も無く

なんとなく大学生になった。

.